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 東京オリンピック・パラリンピックが2021年7月23日に開幕し、大きな混乱なく競技が進んでいる。大会5日目の2021年7月27日に東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が発表した、大会関係者の新型コロナウイルス感染者数は海外からの来日選手が2人で、2選手を含む大会関係者は7人だった。公表を始めた2021年7月1日から大会関係者の累計では155人と増え続けている。

 組織委員会が感染者を毎日公表できているのは、検査結果などのデータ化を含めて感染防止に必要な日々の状況把握が一通り機能している証しでもある。感染者情報を含む大会関係者の日々の検査や健康観察などは、東京五輪のために開発した専用の情報システムで管理している。

 しかし、大会を安全に運営するために大会関係者を国内居住者から隔絶する「バブル方式」が有効に機能し続けるかには幾つも不安要素がある。例えばバブル方式の前提である「大会関係者の外出禁止」にはしばらく例外が存在していた。競技場やプレスセンターが集まる東京都の港区や江東区などでは、最近でもルール違反と見られる外出が目撃されている。

国際放送センターやプレスセンターが置かれ、隔離する「バブル」の施設となった東京ビッグサイト (東京国際展示場)
国際放送センターやプレスセンターが置かれ、隔離する「バブル」の施設となった東京ビッグサイト (東京国際展示場)
(撮影:日経クロステック)
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 感染者が出た場合における濃厚接触者の追跡なども、体制づくりやシステム活用が十分とは言えない。組織委員会の対策システムは政府や自治体の感染症対策部門に開放されているわけではなく、迅速かつ安全な情報共有に課題を抱えるからだ。情報システムの側面から東京五輪の安全を確保するための感染症対策を検証する。

全大会関係者を定期検査、日次で健康報告を義務付ける

 東京五輪では、無観客にした競技場のほか、プレスセンター、放送センターなど大会関係者が滞在する施設や施設内の特定エリアを「バブル」として周囲から隔絶することで感染拡大を防ぐ。来日した大会関係者は原則としてバブル内で行動し、日次の健康観察や定期的な検査を義務付けることでバブル内の感染状況を管理する。例えば出場選手は毎日のPCR検査、報道関係者や放送業務の従事者は4日ごとの検査など、大会関係者は全員、定期的な検査を受ける義務がある。

 感染状態の管理対象になるのは、海外から来日する大会関係者がオリンピックで4万1000人、パラリンピックで1万2000人だ(2021年6月26日時点の組織委員会の集計)。加えて、選手村に入村する日本代表選手などのほか、国内に居住する大会関係者が「バブル内で長く業務に従事する」などの一定条件を満たす場合は管理対象になる。

 これらの大会関係者の感染状況を管理するのは、今大会のために開発した2つのシステムだ。日々の健康状態を報告するための「統合型入国者健康情報等管理システム(OCHA)」と、定期的な検査結果や感染者情報を管理するための「東京2020感染症対策業務支援システム(Tokyo 2020 ICON:Infection Control Support System)」である。OCHAは報告用のスマホアプリも開発し、大会関係者に配布している。

 加えて、感染者が出た場合に濃厚接触者を追跡するための補助ツールも活用している。大会関係者は日本入国時、OCHAアプリに加えて厚生労働省が開発した接触確認アプリ「COCOA」をスマホにインストールしなければいけない。またスマホのGPS(全地球測位システム)機能も入国時にオンに設定して位置情報ログを蓄積する必要がある。