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 東京オリンピック・パラリンピックでは全33競技について、9500時間を超える競技映像を制作する。今大会はこの競技映像の制作・中継におけるデジタル技術導入で前進した。五輪では初めて競技映像の制作システムをクラウド環境に全面移行し、日本で放送権を持つNHKと民放は全競技のネット同時配信に踏み切ったからだ。

急きょの時間変更でもメダリストの活躍をネットで全中継

 五輪競技のネット配信は、日本で放送権を共同保有するNHKと民放がそれぞれの特設サイトで提供している。NHKが「NHK 東京2020オリンピックサイト」で、地上テレビ放送をWebサイトやスマホアプリで同時配信するサービス「NHKプラス」も組み合わせている。

NHKの特設サイト「NHK 東京2020オリンピックサイト」
NHKの特設サイト「NHK 東京2020オリンピックサイト」
(出所:NHK)
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 一方、民放の特設サイトは「gorin.jp(ゴリン・ドット・ジェイピー)」だ。日本民間放送連盟(民放連)の加盟局が共同で運営している。

民放テレビ局が共同運営する東京五輪中継サイト「gorin.jp」
民放テレビ局が共同運営する東京五輪中継サイト「gorin.jp」
(出所:日本民間放送連盟)
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 これらのネット配信は新型コロナウイルス感染拡大防止のため政府が強く要請している「自宅での巣ごもり観戦」に応えている。象徴的な場面が、台風の影響で競技日程が急きょ変更されたサーフィンの最終競技日の中継だった。

 決勝を含む最終競技日は2021年7月28日に予定され、当初はTBS系列局が生放送を予定していた。予選では五十嵐カノア選手や都筑有夢路選手らの日本代表が勝ち進み、注目が高まっていた。しかし台風の接近に伴い急きょ、競技日が前日の7月27日に前倒しされた。

 ただ7月27日午前のテレビ放送は既に他の競技で埋まっており、サーフィンの午前中の競技は中継できない。サーフィン最終競技を見ようと、多くの人が接続したのがgorin.jpとNHKのネット配信だった。五十嵐選手が出場した午前7時からの準々決勝や午前11時48分からの準決勝での活躍は、生中継をネット配信で見ていた人からの口コミで一気に広がった。

 五十嵐選手が進出した27日午後の決勝戦は、その時間に五輪の番組枠を持っていた日本テレビ放送網系列が生中継した。gorin.jpでも同時に配信した。gorin.jpの実況解説は決勝まで国際映像の英語による解説だけだったが、サーフィンはgorin.jpで人気を集めた競技中継の1つとなった。

 ネットで生中継しないパターンもある。gorin.jpではNHKがテレビで生中継する競技のうち「優先権」を持っているものはライブ配信しない。その逆に、NHK 東京2020オリンピックサイトでは民放がテレビで生中継する競技のうち優先権を持っているものはライブ配信しない。NHKと民放の間で取り決めた、競技中継の優先権を互いに侵害しないようにする配慮だ。

 裏を返せば、NHKと民放の2つの特設サイトを併用すれば、全競技を生中継で視聴できることになる。オリンピックの後半期間も、カヌーなど現時点でテレビでの生中継する予定がない競技や、バレーボールやバスケットボールなど一部海外チーム同士の対戦などでネット配信が活躍しそうだ。