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 東京オリンピックは2021年8月8日の閉会式に向けて、大会運営面では大きなトラブルなく競技が進んでいる。テロ対策を含めた厳重な警備と円滑な大会運営への努力は、2021年8月24日に開幕する東京パラリンピックでも続く。警備から混雑回避までの大会運営の一翼をデジタル技術が担っている。

多様性に配慮した顔認証ゲートを採用

 例えば警備の負担を減らしているのが顔認証システムだ。過去の大会でも導入していたが、今回は東京五輪が掲げる「多様性と調和(ダイバーシティー&インクルージョン)」の実現にも一役買うほどに進化している。顔認証システムの導入を担当したNECは、立った人でも車椅子の人でもスムーズに顔認証できるようにゲートのデザインと機能を一新した。

NECが東京五輪に合わせて開発した顔認証ゲート。車椅子の人も利用しやすいデザインや機能を盛り込んだ
NECが東京五輪に合わせて開発した顔認証ゲート。車椅子の人も利用しやすいデザインや機能を盛り込んだ
(出所:NEC)
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 東京五輪では北海道から静岡県まで、屋外を含めて40カ所を超える競技会場がある。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は顔認証ゲートをこれら全会場などに合計約300台設置した。具体的には、各会場の関係者向け出入り口や、選手村、報道関係者や放送業務従事者が集まるMPC(メインプレスセンター)などが置かれた東京ビッグサイト(東京・江東)の入退場などである。

 顔認証ゲートはシステムと連動して2つの要素で本人かどうかを確認する。1つは顔画像。もう1つは、会場への入退場を認めるパスであるアクレディテーションカードに埋め込まれたICチップである。同カードは各国の選手やコーチといった関係者のほか、大会運営スタッフ、国際オリンピック委員会(IOC)役員などのいわゆる「オリンピックファミリー」などに発行され、その対象は10万人以上とみられる。

 2要素を使う顔認証ゲートはこれまでもあったが、NECが今回開発した顔認証ゲートは、カメラなどを支える脚柱を流線形にくぼませるきょう体デザインを採用した。車椅子の人でもつかえることなくゲートに近よって入場手続きをできるようにするためだ。

 リーダーをかざす部分も立った人と車椅子の人が共に使いやすい位置に調整した。立った人は少しかがんでカードをかざすが、カードリーダーの上部を奥側に傾けるなど、どちらの体勢でも大きな負担がないよう傾きを調整した。

 カードをかざした際に顔認証も必要となる。ただ、ゲート上部にあるカメラに顔を近づける必要はない。カメラはゲートへと近づいてくる人を捉えて顔認証を始める機能を備えるからだ。

 今回は顔認証を始める位置や画像を捉える範囲について、車椅子の人も想定して調整しているという。NECは今回採用したデザインを基に、企業や官公庁向けなどの需要でもユニバーサルデザインに配慮した顔認証ゲートの製品を提供できる体制を整える考えだ。

熱中症と「密」、データが警告

 新型コロナ禍にある真夏に開かれた東京五輪。安心・安全の確保には、熱中症や「密」を避ける対策が課題となった。複数会場にまたがるため、人や物資の運搬・配送の効率化も不可欠だ。こうした課題の解決にデータの活用が役立った。

 2021年7月30日から陸上競技が開催されている国立競技場(東京・新宿)では、炎天下への対応に、センサーを使った熱中症対策システムを導入した。酷暑にさらされる大会関係者は適切な休憩を取りながら業務に当たるよう指示を受けているが、同システムがその判断を助けている。国立競技場の内外に数千人いる大会関係者のうち、主に屋外で働く人など約1000人が導入している。