日本が東京オリンピックで獲得した金メダルの数は過去最多の27個を記録した。躍進につながった要因の1つに、体重や疲れ具合といった選手の「コンディション」を管理するデジタルツールの存在があった。ユーフォリアの「ONE TAP SPORTS」だ。
同社の宮田誠代表取締役Co-CEO(共同最高経営責任者)によれば、金メダルを取った女子ソフトボールをはじめとする日本代表選手が使い、その利用率は45.2%だという。ONE TAP SPORTSは選手のコンディション管理をどう変えたのだろうか。
ONE TAP SPORTSの使い方はシンプルだ。まず各選手がスマートフォンなどからコンディションに関するデータを入力する。入力項目は体重や体脂肪、睡眠時間などの身体データのほか、前日の練習時間、肉体的な疲労度、精神的な疲労度などだ。入力されたデータはクラウド上に集約・管理され、トレーナーをはじめとするスタッフはWebブラウザー経由でそのデータを確認・分析し、選手へのアドバイスなどに生かす。
新型コロナ関連では、せきや発熱などの諸症状の有無も入力できる。宮田代表は「新型コロナの感染対策として導入したチームも多い」と話す。最小利用者は選手10人となり、月額利用料(税込み)は1人当たり880円から(学生は330円)である。
身体の疲れ度合いと心の疲れ度合いがかい離したら要注意
実際にどんな効果があったのか。
東京オリンピックで金メダルを獲得した女子ソフトボール日本代表チームのトレーナーを務める村上純一氏(デンソー女子ソフトボール部トレーナー)は、「選手が入力したコンディションをその日のうちにスタッフ全員で確認しやすくなった」と情報把握のスピードが高まった点を効果の1つとして挙げる。以前は紙で管理しており、必要なスタッフには紙で配っていたという。
女子ソフトボール日本代表チームはコンディションに関する15項目に加えて新型コロナ対策関連の項目も入力した。村上トレーナーはコンディションをデータ入力する意義について次のように説明する。
「身体的、あるいは精神的な疲労度は主観に基づくため、その基準は選手ごとに異なる。だが、ツールを使うと選手ごとに疲労度の変動を標準偏差で確認できる。身体的な疲労度と精神的な疲労度がかい離しているときはケガのリスクが大きくなるもの。ケガを予防するうえで各選手の疲労度を把握できる意義は大きい」――。
精神的な疲労度に関しては、女子ソフトボール日本代表チームには精神的な問題の相談窓口となるメンタルコーチがいる。それでも村上トレーナーは精神的疲労度を数値で入力する機能は有用だとする。
「具体的に何がつらいのかを文章で入力する仕組みだと選手や問題によっては入力しないことも想定できる。経験的に『精神的疲労度が高い』と入力した選手は何かしらのサポートが要るケースが多い。スタッフが会話のきっかけにできるため非常に有用だと感じている」(村上トレーナー)。