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 第1回でも触れたが、登録車と比べてコストや搭載スペースなどの制約が厳しい軽自動車。そのため、電動パワートレーンや電池などの追加搭載が必要な電動化は遅れていた。そんな中でかろうじて存在しているのが、ベルト駆動のISG(モーター兼発電機)を使った簡易ハイブリッド車(MHEV)である。

第1回 軽の電動化 重くのしかかる30年度燃費基準

 オルタネーターに代えて、最高出力2kW前後と小型で低出力のISGを積む(図1)。それにより、限られた搭載スペースを有効に活用するとともに、ベルト駆動ならではのエンジン再始動時のショックの少なさや、加速性能の向上といった付加価値を提供する。

図1 日産自動車の軽ハイトワゴン「デイズ」MHEVモデルのハイブリッドシステム
図1 日産自動車の軽ハイトワゴン「デイズ」MHEVモデルのハイブリッドシステム
黄色がISG、青色がリチウムイオン電池、赤紫色が鉛蓄電池、赤色がリレー。リチウムイオン電池のパック内にももう1つのリレーが搭載されている。(出所:日産自動車)
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 しかも、それらをリーズナブルに実現するために、電源システムにはガソリン車と同じ12Vのものを使い、価格がこなれた12Vの部品も利用できるようにしている。

 駆動用に追加する電池も、容量は大きなものでも120Whと控えめ(図2)。トヨタ自動車のストロングハイブリッド車(ストロングHEV)「プリウス」の0.8kWhと比べると、1/6にも満たない。価格が高く、容積も大きくなりがちな電池の容量を抑えて、MHEVという電動車を低コストに仕立てるのに役立てている。

図2 スズキの軽ハイトワゴン「ワゴンR」MHEVモデルの電池パック
図2 スズキの軽ハイトワゴン「ワゴンR」MHEVモデルの電池パック
助手席の下に置かれた箱状のもの。容量は36Whである。(撮影:日経Automotive)
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 だが、第1回で紹介したように、同MHEVの欠点は燃費改善効果の低さである。「乗用車の2030年度燃費基準」(企業別平均燃費基準方式、CAFE方式)との燃費のかい離が大きく、新たな電動化の模索が必要とされている。