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 軽自動車には、ハイブリッド車(HEV)より電気自動車(EV)の方が向いているかもしれない―。群馬大学大学院理工学府知能機械創製部門客員教授の松村修二氏など、今回の取材を通じて多くの専門家から聞こえてきた声だ。

 1つの理由は、登録車よりも搭載スペースが限られた軽自動車にとって、エンジン関連の部品を無くせる利点が大きいからだ。実際、三菱自動車の軽商用バン「ミニキャブ・ミーブ」や既に生産を終了した「i-MiEV」などで軽EVは前例がある。パッケージとして成り立つことが分かっている。

 また、EVは、EVシフトが加速している現状を考慮すると、プラットフォーム(PF)からの全面的な見直しや、最適化のための大規模な設計変更が、将来投資として許容される可能性がある。ハイブリッド車(HEV)では、それは許されないとみる向きが多い。

 加えて、軽自動車は登録車に比べて、年間の平均走行距離が短い。セカンドカーとしての利用も多い。充電1回当たりの航続距離(以下、航続距離)で300km以上、理想的には500km以上を期待される登録車のEVよりも、短い航続距離で受け入れられる可能性がある。

 ただそうは言っても、軽EVも軽自動車である以上は軽自動車としての価格を実現しなければならない。この点で、軽EVの最大の課題はコストといえるだろう。

 現在、EVのコストを押し上げているのは、電池である。EV用の電池はまだ高価で、電池パックの価格は低下してきているが、150ドル/kWh前後(1ドル=110円換算で1万6500円)とされる。従って、仮に軽EVへの電池の搭載容量を20kWhとした場合、その価格は33万円前後に上る。

 軽のガソリン車では、「エンジンは10万円しない。変速機を入れても10万円ちょっと」(日産自動車の元技術者でブルースカイテクノロジー代表取締役社長の矢島和男氏)。一方、EVでは、電池に加えて電動アクスルや車載充電器、直流・直流(DC-DC)変換器も必要となる。軽EVの車両価格は、戦略的な値付けをしない限り、ガソリン車モデルに対して電池代分はプラスになってしまうのが現状である。