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 学校教育では今、「知識を詰め込む教育」から「多様な価値観を共有し、協働によって成果を生み出せる力を育成する教育」への変化が求められている。ドルトン東京学園中等部・高等部は、そうした学習者を中心に置く教育の実現を目的とした新設の中高一貫校である。

 河合塾グループのドルトン東京学園が経営し、米国の教育家ヘレン・パーカストが提唱したメソッド「ドルトンプラン」に基づく教育を展開する。2019年4月に開校し、現在、2期工事が進む。

3階から校舎中央の2階ラーニングコモンズを見下ろす。生徒が自ら選べる空間を各所に設け、仲間や先生とのコミュニケーションを取りやすい、どこでも快適に学習できる校舎を目指している(写真:安川千秋)
3階から校舎中央の2階ラーニングコモンズを見下ろす。生徒が自ら選べる空間を各所に設け、仲間や先生とのコミュニケーションを取りやすい、どこでも快適に学習できる校舎を目指している(写真:安川千秋)
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前面道路側(東側)の外観。壁式鉄筋コンクリート造の構造壁と教室開口部・外部テラスがユニットとなり、規則正しくリズム感ある外観を構成する(写真:安川千秋)
前面道路側(東側)の外観。壁式鉄筋コンクリート造の構造壁と教室開口部・外部テラスがユニットとなり、規則正しくリズム感ある外観を構成する(写真:安川千秋)
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アプローチとなる広場から、北面のエントランスホール部分を見る。写真手前側では現在、2期工事が進んでいる(写真:日暮写真事務所)
アプローチとなる広場から、北面のエントランスホール部分を見る。写真手前側では現在、2期工事が進んでいる(写真:日暮写真事務所)
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 ドルトンプランにおいては、知識享受の授業にとどまらず、自由と協働の原理の下に教育がなされる。学校校舎は、生徒自ら「学びの設計・探求・発表」のサイクルを繰り返し、主体性を会得する場となる。

 生徒たちは、仲間や教職員との活発なコミュニケーションを通じて自主的に気づきを獲得し、学びに没頭する。その在り方とICT(情報コミュニケーション技術)活用の親和性は高く、本校でも当初から、生徒1人1台の端末利用を前提に計画を進めている。

 敷地は、東京都調布市の東部、小田急小田原線成城学園前駅と京王線仙川駅の中間に当たる緑豊かな国分寺崖線に接する丘の上に位置する。オオタカなどの貴重な生物も生息する森に囲まれた、学習に集中しやすい閑静な環境を誇る。

 設計に当たっては、学園側の設立準備室と設計チームの間で、ドルトンプラン実践のための教育の在り方や、そのための空間はどうすべきかを議論した。当初は同敷地内に生徒寮を併設する構想もあったため、生徒の生活の在り方も含めて検討を進めた。

 濃密なスタディーを重ねた結果、自主的な気づきを促す「シームレスネットワーク型プラン」という考え方が生まれた。生徒の自主性を重んじると同時に教職員との間のコミュニケーションの活性化も考慮したものだ。

3階平面図
3階平面図
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2階平面図
2階平面図
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1階平面図
1階平面図
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 ドルトンプランの理念にICTが融合すると、学習は場所を限定しないシームレスなものとなる。校舎は場を限定せず、すべての空間を学習利用できるように計画した。地上3階建ての建物外周部に28室の一般教室と4室の特別教室を配置、それらが囲む中央部にラーニングコモンズとスタッフルームなどを計画した。

 様々な「場所」は、比較的大きなラーニングコモンズから2~3人で集まるのにちょうどいい小さな場所まで、境界を曖昧にしながらつなげるように計画した。各教室と廊下間に設けたアクティブスペースを介してそれらが同心円状かつ緩やかに連続するシームレスネットワークプランが実現した。

2階から見た大階段(写真:安川千秋)
2階から見た大階段(写真:安川千秋)
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畳の小上がりを並べた2階ラウンジ(写真:安川千秋)
畳の小上がりを並べた2階ラウンジ(写真:安川千秋)
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