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 山口・宇部空港から車で1時間ほど。中国地方の山間部に位置する山口県美祢(みね)市は、かつては石炭、そして今は石灰石の産地として発展してきた工業都市だ。その美祢市の西側、下関市との市境近くの緑豊かな地域に、2007年4月、国内初のPFI(民間資金を活用した社会資本整備)事業による刑務所「美祢社会復帰促進センター」が開設、5月中旬には受刑者を迎えた。

 「収容棟と作業所が近接している合理的な配置」と評価するのは、現地を案内してくれた法務省矯正局の吉野智専門官だ。総務課PFI推進室で、美祢社会復帰促進センターを担当している。昭和時代の刑務所建築は、日照を優先して南面配置を採用した。学校施設と同じ考え方だ。この配置では作業所から遠くなる収容棟があり、移動の際、見張りの刑務官が多数必要となる。作業所(教育・職業訓練棟)を中心に収容棟を配置したこの施設では、60人のユニットの看視に必要な刑務官は1人で済む。

 刑務官の省力化に貢献しているのは、施設配置だけではない。受刑者の制服に個別の無線タグを取り付け、天井に配置したアンテナで常に居場所を把握できる仕組みなどのハイテク設備を採用した。扉は警備室から開閉を遠隔操作できる。この集中管理システムの採用で、移動中に異なるユニット間の接触を防ぐことが可能になった。

 PFIの導入の背景には、各地の刑務所における慢性的な過剰収容がある。2001年から02年にかけて名古屋刑務所で刑務官の集団暴行により受刑者が死亡した事件の背景にも、過剰収容による刑務官の負担増があったとされる。同事件が監獄法の約100年ぶりの改正の契機となるなど、刑事施設はハード、ソフトの両面で見直しの時期に来ている。初の官民協働となる本施設の内側を、写真と関係者のインタビューで見ていこう。

◆図面を含んだ詳細記事は日経アーキテクチュア7月9日号トピックスに掲載

センターの敷地入口。中小企業基盤整備機構が開発し、1997年から分譲開始したが契約に至らなかった工業団地用地約28haを、事業用地として転用した。正面右奧に見えるのが庁舎棟(写真:花田 憲一、以下同)
センターの敷地入口。中小企業基盤整備機構が開発し、1997年から分譲開始したが契約に至らなかった工業団地用地約28haを、事業用地として転用した。正面右奧に見えるのが庁舎棟(写真:花田 憲一、以下同)
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