日本の1次エネルギー供給量と電力が占める比率を示したのが図1だ。2018年時点で電力は全体の約46%を消費する。内訳は、再生可能電力が9%、石炭や天然ガスなどを使う火力発電所が34%、原子力が3%となる。
図2に消費構成を示す。電力に関しては産業や業務、家庭での消費が大半を占め、産業に関しては1/3を電力に頼る。1次エネルギーの54%はほぼ産業と運輸が占め、石炭や石油、天然ガスを使用する。1次エネルギーの88%は化石燃料に依存している。2030年にはこれらの45%を、2050年には100%をグリーン燃料とグリーン電力に置き換える必要がある。
日本は、世界第4位のエネルギー消費国でありながら、エネルギー自給率はわずか12%。これは先進国の中でも極めて低く、石炭や石油、天然ガスといったエネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼ってきた。原子力政策に失敗し、電力の再生可能エネルギー化に関しても、先進国でワースト1であり、中国やインドにも劣る。
2030年に2020年比で二酸化炭素(CO2)の45%削減、2050年にカーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)を実現するには、CO2削減に見合う脱化石燃料化が必要となる。自動車の電気自動車(EV)化などと近視眼的な話をする前に、現在のエネルギー構成を今後どのように転換するかという政策立案が、政府にとっては急務なはずだ。
電力セクターでは2030年に向け、50%程度を再生可能エネルギーの拡大(詳細は後述)でまかなう必要があるが、これまで1次エネルギーとして使用してきた、石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料を、カーボンニュートラル燃料やカーボンフリー燃料などのグリーン燃料〔水素やバイオ燃料、水素とCO2から製造される液体合成燃料(e-Fuel)、水素とCO2からメタネーションによって合成されるメタン、アンモニアなど〕に転換することも喫緊の課題となる。
同時に、政府の後押しの下で関連企業がグリーン燃料の開発や大量生産に関わる技術の確立を推進すべきことは言うまでもない。
とはいえ、グリーン燃料に関しては、国内での大量調達は非常に難しい。これまでの化石燃料と同様、輸入に頼ることになる。電気は輸入できないが、燃料は輸入可能だ。1次エネルギーの20%を消費する自動車をEVに転換するという、電力に頼った施策は非常に危うい。これは中国や米国、欧州連合(EU)も同様だ。
再生可能エネルギー50%は難しくグリーン燃料が必要
続いて、日本の発電におけるエネルギーミックスを見ていこう。図3はエネルギー構成比、図4は排出係数を示す。それぞれについて、日本の2018年における実力値(実績)と日本の2030年の基本政策、国連目標であるCO245%減〔2030年に電力製造時のCO2排出量を45%削減(再生可能エネルギー50%)〕について示した。2030年までにCO2を45%削減するためには、筆者の試算では2018年比で、石炭を31%から11%に縮小する一方、再生可能エネルギーを18%から50%へ大幅に拡大する必要がある。日本にとっては非常に高いハードルである。
小泉進次郎環境大臣は現在の基本政策に示す22~24%の2倍は必要だと述べたが、それでも足りない。そのため、50%の内訳には、石炭や天然ガスに代わるグリーン燃料も含める必要性が出てくる。
2021年11月に英国で開かれる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、各国政府は具体的な目標を提出することになるが、現在経済産業省が調整中のものは、石炭19%、再生可能36~38%と、筆者の示す目標とはほど遠く、さらに原発も20~22%と従来と変わっていない。これは、稼働中の原発を9基から25基程度に増やすことを意味し、廃棄処分場をいつまでたっても決定しない中でのこの姿勢は、以前から全く変わっておらず、無責任そのものだ。