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EV対HEV、WtWでHEVに軍配

 次に、2030年におけるEVとハイブリッド車(HEV)のWell to Wheel(WtW;油田からタイヤを駆動するまでのCO2排出量)、および原材料調達から生産、使用、廃棄までの全体で評価するライフサイクルアセスメント(LCA)でのCO2に関して比較してみよう。

 図5は、2018年時点における各国の単位電力当たりのCO2排出量を示している。インド、中国、日本がワースト3である。図中の①は日本の2018年における実力値(2018実績)、②は日本の2030年の基本政策(2018年)、③は国連目標であるCO245%減〔2030年に電力製造時のCO2排出量を45%削減(再生可能エネルギー50%)〕に相当する。

図5●2018年における単位発電量当たりのCO<sub>2</sub>排出量
図5●2018年における単位発電量当たりのCO2排出量
(作成:筆者)
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 図6は、図5を基に、EVのWtWでのCO2排出量を算出したもので、HEVおよびエンジン車のWtW でのCO2排出量も図中に示した。2018年時点ではEVのWtWでのCO2排出量がHEVを大きく上回っている。おまけに、②のエネルギー基本政策を進めても、HEVを下回るCO2排出量とはならない。③の国連目標であるCO245%減を満たして、ようやくEVのCO2排出量がHEV(2030年時点でシステム効率が20%改善したと仮定)のそれを5%ほど下回る。だが、これもHEVのエンジン用ガソリンにバイオ燃料や合成液体燃料(e-Fuel)を5%以上混合すれば、HEVが優位になるということだ。

図6●2018年におけるWtWでのCO<sub>2</sub>排出量
図6●2018年におけるWtWでのCO2排出量
HV:ハイブリッド車。(作成:筆者)
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EV対HEV、LCAでもHEVが優位

 欧州では今、2030年に向けてLCAでのCO2規制の動きが進んでおり、今後世界の潮流になると考えられる。加えて、欧州や米国ではLCAを基準とした国境環境税の議論も進行中である。

 図7は、HEVとEVのLCAでのCO2排出量を、10年-15万kmの条件(日本におけるクルマの平均的な使用条件)で廃棄することを前提に比較したものである。2018年時点で、EVはHEVに対してCO2排出量が43%多い。③の国連目標であるCO245%減を満たしても、EVのCO2はHEVのそれを9%上回る結果となった。

 国が多額の補助金を出し、インフラ整備を推進するEVのトータルのCO2排出量が、価格的にもリーズナブルで、ユーザーにも負担をかけないHEVに対して優位性はないということだ。中国やインドではこれがより顕著となり、米国は日本と同等だ。

 再生可能電力化に猛進する欧州では、2030年以前にEVのメリットがわずかに出てくると予測する。だが、湯水のように補助金を使い、あらゆる措置を投入してEV拡大に傾注する政策は危ういのではないか。補助金やインフラ(充電、送電網)にかける予算を、グリーン燃料の製造推進に回す方がよほど得策であることは自明である。

図7●15年-10万km走行時のLCAでのCO<sub>2</sub>排出量
図7●15年-10万km走行時のLCAでのCO2排出量
2030年に電力製造時のCO2排出量を45%削減することを前提とする。(作成:筆者)
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