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 給与デジタル払いが解禁されたら企業はどうすべきか。改修すべきシステムの内容やスムーズなシステム運用の勘所は。給与支払関連業務において見直すべき点は何か。給与デジタル払いを見据えた企業の取り組みや構築予定のシステムについて、企業が気をつけるべきポイントが取材を通して見えてきた。

「経費デジタル払い」の仕組みを応用可能

 給与デジタル払いを導入する企業は、自社の銀行口座から従業員が持つスマホ決済サービスなどのアカウントに給与を直接振り込むことになる。そのため自社の人事・給与システムを改修し、振り込む対象のスマホ決済サービスのシステムに振り込み処理の電文を送れるようにする必要がある。

給与デジタル払いを導入するには、システム改修や業務手順の見直しが必要になる
給与デジタル払いを導入するには、システム改修や業務手順の見直しが必要になる
(出所:123RF)
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 例えば30万円の給与のうち、25万円を銀行口座、5万円をスマホ決済のアカウントに振り込むといったケースが想定できる。企業はこれらを分けて計算し振り込めるよう人事・給与システムを改修する必要がある。具体的には支払う給与に関する情報をCSV形式などで納めた電文ファイルを生成したり、スマホ決済事業者との間でAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)連携したりする機能が必要になるとみられる。

 給与デジタル払いの具体的な仕組みはどうなるのか。企業から個人への送金サービスの仕組みを見れば、給与デジタル払いの処理の流れをイメージできそうだ。送金・決済サービスを手掛けるベンチャー企業のpring(プリン)は、企業から個人への送金サービス「業務用プリン」を提供している。同社は給与デジタル払いが解禁されたら、業務用プリンを転用できるとみる。「企業から個人にお金を送るという(業務用プリンの)仕組み自体は、給与でも経費でも使える」(pringの事業開発責任者を務める佐久間祐介氏)からだ。

 具体的な仕組みはこうだ。企業は従業員の携帯電話番号、金額、送金タイトル(従業員の名前など)といった情報を納めたCSVファイルをつくる。携帯電話番号は従業員が経費などを受け取るアカウントを指定するために使う。次にCSVファイルをプリンの管理画面にアップロードすると、送金処理は完了だ。

 業務用プリンを導入するに当たっては、同サービスのフォーマットに合わせたCSVファイルを生成する機能を自社の人事・給与システムに追加する必要がある。「マネーフォワード クラウド経費」や「楽楽精算」といった人事・給与パッケージのクラウドサービスは業務用プリン向けのCSVファイルを出力できるため、これらを使っていればシステム改修の手間はない。一部の人事・給与パッケージは業務用プリンとAPI連携しており、CSVファイルをつくらなくても管理画面から直接送金できる。

 企業が負担する送金手数料は1件当たり50円。お金を受け取った従業員は、別の銀行口座へ送金したり店舗での買い物に使ったりできるほか、セブン銀行のATMで現金を引き出せる。

「業務用プリン」のお金とデータの流れ
「業務用プリン」のお金とデータの流れ
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