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2021年4月、SOMPOホールディングスは事業の柱にデジタルを加えた。2021年7月にはデジタル専業子会社を設立、中長期に売上高1000億円を目指すとした。5年前に3メガ損保でいち早く全社デジタル改革を推進した同社。その足跡を振り返る。

 「ここが成長加速の新たなスタートラインだ」。2021年7月1日、東京・新宿のSOMPOホールディングス(HD)本社。同社のグループCDO(最高デジタル責任者)を務める楢崎浩一執行役専務の顔から笑みがこぼれた。

 この日、産声を上げたのは新会社「SOMPO Light Vortex(ライト・ボルテックス)」。SOMPOHDが100億円を出資して設立し、中長期の売上高目標を1000億円と掲げているデジタル事業子会社だ。

 事業領域は大きく2つ。1つはデジタルソリューション事業の外販だ。そこではSOMPOHDが出資するスタートアップの要素技術を活用する。

 第1弾として、スマートフォンを使った健康管理アプリ「Health Checker(ヘルスチェッカー)」の実用化を進める。スマホのカメラで撮影した顔の映像から脈拍と酸素量、呼吸を計測して健康状態をチェックするもので、イスラエルの健康関連スタートアップであるビナーの映像解析技術を活用する。新型コロナウイルスの感染拡大で健康管理体制を強化したい企業や学校に販売する方針だ。

 もう1つの事業領域はアジャイル開発の受託サービスだ。当面はSOMPOグループ企業向けに提供し、各社のデジタル化を後押しする。将来的にはグループ外からも受託する考えだ。

デジタル化は「横串×縦串」で

 Light Vortexの設立はSOMPOHDにとって新たなサービス会社を1つ増やす以上の意義がある。「これまで我々DX(デジタルトランスフォーメーション)チームは主に既存の事業会社のデジタル化を『横串』で支えてきた。今度は自ら事業を興す『縦串』のデジタルにも取り組む」。Light VortexのCEO(最高経営責任者)を兼務する楢崎氏はこう語る。

図 SOMPOホールディングスの組織体制と直近のデジタル関連施策
図 SOMPOホールディングスの組織体制と直近のデジタル関連施策
「縦」と「横」で連携して全社DXを推進(出所:SOMPOホールディングスの資料を基に日経コンピュータ作成)
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 横串とはどういうことか。SOMPOHDが手掛ける事業ドメインは、2021年3月までは4本柱で、具体的には「国内損害保険事業」「国内生命保険事業」「海外保険事業」「介護・シニア事業(旧介護・ヘルスケア事業)」だった。

 それぞれの「事業オーナー」は収益責任を負うだけでなく、各事業のDXも主導。そのDXを、SOMPOHDが2016年に設けた「デジタル戦略部」やグループCDOである楢崎氏が必要に応じて側面支援するという形だった。

 2021年4月1日、5本目の柱として「デジタル事業」が加わった。楢崎氏が同事業のオーナーとなり、他のオーナーと同様に収益責任を負う。

 「既存の事業領域に新たな社会価値を生み出すには縦串のデジタルが必要だ。(SOMPOHDの)桜田(謙悟)社長ともそう議論しながら準備してきた」(楢崎氏)。この考えを具現化すべく新会社を設立したわけだ。

 DXの経験が豊富なデジタル戦略部とあえて別組織にしたのは、自ら稼ぐという役割を明確にして、中長期に売上高1000億円を達成するという決意の表れでもある。加えて業法の規定で、サービスの外販を損保会社自身が担えないという理由もあった。