開催間際に決定した「無観客」五輪。気をもみ、大会に合わせてコンディションを整える競技者や大会運営者らと異なり、会場整備に携わった建築関係者は既に新たな仕事のサイクルに身を投じている。しかし、都市の資産となり得る「レガシー」をつくる一員として、現在と過去・未来をつなぐ役割は今後も続く。1年間の延期を経た夏、識者の声と併せ、それぞれの立場の思いを聞く。

無観客の夏「五輪レガシー」再考
目次
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ユニバーサルデザインやSDG’sに対応、五輪レガシーとして馬事普及に期待
「馬事公苑」設計者に聞く(後編)
「東京2020」大会のためにリニューアルが進められた「馬事公苑」では、山下設計が仮設オーバーレイを含む新施設の設計を手掛けた。担当者の髙木賢治・ソリューション本部特任部長は大会後の利用に向け、2期工事の実施設計に着手した。五輪レガシーの整備を通じ、「公苑開設当初からの使命である馬事普及につなげたい…
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アジア各国から競馬場計画を特命受注、東京五輪で馬術競技会場の設計担当
「馬事公苑」設計者に聞く(前編)
「東京2020」大会の馬術競技実施に向けてリニューアルされた「馬事公苑」。大成建設との連合体で設計に携わった山下設計ソリューション本部の髙木賢治特任部長は、五輪招致段階から複数の競技会場の基本計画に関わっている。競馬場や馬術競技場のスペシャリストとして腕を振るう現在までの歩みを聞いた。
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都民向け開業は22~23年、見えてきた五輪施設群の後工事計画
五輪に続き、パラリンピックの無観客開催が決まった。「東京2020」大会のために新たに整備された競技施設は、ついに一般観衆を迎え入れることができなかった。今後に向けて後利用時の収支の試算が既にはじかれている他、「大会後工事」の予定も明らかになった。最新写真で都の施設群を概観してみる。
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新水泳場の飛び込み台は代々木競技場を原型とする「父へのオマージュ」
国立代々木競技場改修、東京アクアティクスセンター担当・丹下憲孝氏に聞く(後編)
国立代々木競技場に元のまま残っていないものの1つが、水泳場の飛び込み台だ。丹下健三氏(1913~2005年)に撤去を「説得」する役を引き受けたのが、息子である丹下憲孝氏、現在の丹下都市建築設計会長だった。「東京2020」大会のための最新水泳場でその飛び込み台の意匠を参照したのは、憲孝氏にとっては「…
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代々木競技場における選手と観客への目配り、丹下健三の設計理念を現代に継ぐ
国立代々木競技場改修、東京アクアティクスセンター担当・丹下憲孝氏に聞く(前編)
1964年東京五輪のために建てられた国立代々木競技場、そして2020年の東京大会に向けて建てられた東京アクアティクスセンター。50年以上の隔たりはあっても、設計の理念は共通している。父である丹下健三氏(1913~2005年)の事務所業務を引き継ぎ、現在は丹下都市建築設計(東京・港)の会長を務める丹…
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"解像度"の高い都市づくりとは? 2025年万博で実験に挑む
パノラマティクス・齋藤精一氏に聞く(後編)
2010年代の都心部の開発は五輪を理由にスピードを上げ過ぎた結果、独自の魅力につながる“解像度”を高められずに進んだのではないか。五輪の動きから離れ、25年の大阪・関西万博のプロジェクトに携わる齋藤精一氏は、都市づくりのための実験に改めて挑みたいと考えている。
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齋藤精一氏が見てきた経済と文化のアンバランス、そしてクリエイティブの行方
パノラマティクス・齋藤精一氏に聞く(前編)
パノラマティクス(旧ライゾマティクス・アーキテクチャー)を主宰する齋藤精一氏は、アートやイベントなど様々な分野のクリエイティブディレクションを手掛け、時代をリードしてきた。デザイナーやクリエイターの降板・交代劇なども目立った今回の国家的イベントを、どう見てきたのか。文化とレガシーという観点から聞い…
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五輪史上初の「リサイクルプラスチック表彰台」は3Dプリンター活用で98台量産
東京五輪・パラリンピックの会期が折り返し地点を通過し、続々とメダリストが決定。合わせて出番が増えてきたのが「リサイクル表彰台」だ。リサイクルプラスチック、3Dプリンター活用の両面で五輪・パラリンピック史上初の試みとなる。表彰台も「レガシー」である、という大会の考え方を反映させている。
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五輪レガシー活用のグランドデザインを描き、都から独立した機関で推進を
立命館大学産業社会学部・金子史弥准教授に聞く(後編)
東京五輪・パラリンピックの閉幕後、事後評価の議論は必ず起こるはずだ。そのとき開催都市として、大会招致の核心である「レガシー(遺産)」や関連する取り組みの持続性に、本格的に向き合う動きは現れるのか。前編に続き、今後の展望を立命館大学産業社会学部の金子史弥准教授に聞いた。
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総花的になりがちな「五輪レガシー」の初志とは何だったのか?
立命館大学産業社会学部・金子史弥准教授に聞く(前編)
開催中の東京五輪。一過性のイベントで終わらせないために、招致時に強調されたのが「レガシー(遺産)」という言葉だった。2021年7月22日には大会後の取り組みの方針が発表された。果たして開催都市・東京に何が残るのか。その評価は適切になされるのか。スポーツ社会学やスポーツ政策論を専門とする立命館大学産…
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国立競技場は「変容してしかるべきだ」、五輪開催後に持ち込まれる発想に期待
「国立競技場」設計者に聞く(後編)
東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムである「国立競技場」の設計に携わった、大成建設の川野久雄・設計本部建築設計第二部部長。2000年代以降、スポーツ施設の整備手法のダイナミックな変化を体験してきた。その一過程で関わる機会を経た五輪会場の設計現場でも、大きな刺激を受けたと語る。
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スポーツ施設と共に30年歩み、東京五輪でメーンスタジアムの設計を担当
「国立競技場」設計者に聞く(前編)
東京五輪・パラリンピックで開・閉会式、陸上競技、サッカーの会場となる予定の「国立競技場」。3社JVのうち大成建設から設計に参加した川野久雄・設計本部建築設計第二部部長は、同社におけるスポーツ施設のスペシャリストだ。どのような経験を基に今回の競技会場に関わったのかを聞いた。