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 東京五輪・パラリンピックで開・閉会式、陸上競技、サッカーの会場となる予定の「国立競技場」。3社JVのうち大成建設から設計に参加した川野久雄・設計本部建築設計第二部部長は、同社におけるスポーツ施設のスペシャリストだ。どのような経験を基に今回の競技会場に関わったのかを聞いた。

 「自ら望み、スポーツ関連の施設を担当してきた」

 こう語る川野氏は、1991年に大成建設に入社。90年代からスタジアムやアリーナの担当を継続してきた。文化・体育施設を受け持つ建築設計第二部に属し、その中で約30人を率いる。

国立競技場の設計に携わった大成建設の川野久雄・設計本部建築設計第二部部長。1964年兵庫県生まれ。91年神奈川大学大学院建築学科修士課程修了後、大成建設入社。2016年に特定プロジェクト部部長、19年に設計本部建築設計第二部部長に就き、現在に至る(写真:日経クロステック)
国立競技場の設計に携わった大成建設の川野久雄・設計本部建築設計第二部部長。1964年兵庫県生まれ。91年神奈川大学大学院建築学科修士課程修了後、大成建設入社。2016年に特定プロジェクト部部長、19年に設計本部建築設計第二部部長に就き、現在に至る(写真:日経クロステック)
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 組織の一員として、設計業務に携わる。大空間建築は、施工を含む社内外の知見やノウハウを取り入れるつくり方が必須となるため、その醍醐味を感じてきた。

 「スポーツ施設や文化施設は市民との関わりが強いものだ。多彩なワークショップが行われるなど、設計の進め方は変化を続けてきた。その中で、みんなが求めるものをまず見極め、そこに建築としての特色を持たせるアプローチを取っている」

 大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JVで約100人の設計陣容となった「国立競技場」の整備には当初から関わった。主に大空間のデザインや構造、施工性の検討に携わっている。作業に区切りのついた2017年1月には管理技術者を引き継ぎ、以後もデザインや納まりの検討、工程調整などを19年11月の竣工前まで担い、それら業務のまとめ役に就いた。

国立競技場の内観(19年12月撮影)。川野氏は、大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JVの一員として整備計画に携わった。それ以前、ザハ・ハディド・アーキテクツなどによる旧整備計画にも、国による15年7月の白紙撤回時まで関わった。その際は施工予定者が設計を支援するECI(アーリー・コントラクター・インボルブメント)方式の下、設計面の技術協力を行った(写真:吉田 誠)
国立競技場の内観(19年12月撮影)。川野氏は、大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JVの一員として整備計画に携わった。それ以前、ザハ・ハディド・アーキテクツなどによる旧整備計画にも、国による15年7月の白紙撤回時まで関わった。その際は施工予定者が設計を支援するECI(アーリー・コントラクター・インボルブメント)方式の下、設計面の技術協力を行った(写真:吉田 誠)
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 続いて担当した「栃木県総合運動公園東エリア(日環アリーナ栃木)」は、PFI(民間資金を活用した社会資本整備)による大規模プロジェクトで、設計は梓設計、安藤設計とのJV。約5000席のメインアリーナやサブアリーナ、水泳場が21年1月に竣工している。

 他に、22年竣工予定の「滋賀県新県立体育館整備事業」、ともに24年竣工予定の「青森市アリーナ及び青い森セントラルパーク等整備運営事業」や「広島市サッカースタジアム等整備事業」 などが川野氏の部門で進む。

PFIによる「栃木県総合運動公園東エリア(日環アリーナ栃木)」。21年1月竣工、同3月開業。設計は梓設計・大成建設・安藤設計JV、施工は大成建設・中村土建・渡辺建設JV(写真:大成建設)
PFIによる「栃木県総合運動公園東エリア(日環アリーナ栃木)」。21年1月竣工、同3月開業。設計は梓設計・大成建設・安藤設計JV、施工は大成建設・中村土建・渡辺建設JV(写真:大成建設)
Park-PFI(公募設置管理制度)による「青森市アリーナ及び青い森セントラルパーク等整備運営事業」完成イメージ。24年竣工予定。大成建設は、隈研吾建築都市設計事務所や地元8社を含む10社と協働している(資料:大成建設)
Park-PFI(公募設置管理制度)による「青森市アリーナ及び青い森セントラルパーク等整備運営事業」完成イメージ。24年竣工予定。大成建設は、隈研吾建築都市設計事務所や地元8社を含む10社と協働している(資料:大成建設)
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DB(設計・施工一括)方式による「広島市サッカースタジアム等整備事業」 完成イメージ。24年竣工予定。大成建設は、建築家の仙田満氏が会長を務める環境デザイン研究所や地元3社を含む7社と協働している(資料:大成建設)
DB(設計・施工一括)方式による「広島市サッカースタジアム等整備事業」 完成イメージ。24年竣工予定。大成建設は、建築家の仙田満氏が会長を務める環境デザイン研究所や地元3社を含む7社と協働している(資料:大成建設)
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1000人規模から5万人規模まで経験

 進行中の整備事業の過半は、複数社で進めているものだ。他の設計事務所や自社を含む施工担当会社と共に取り組んだり、運営担当会社と共に取り組んだり、多様な人材が集まる事業体で臨んでいる。

 集団作業となる現場自体は、1990年代から既に体験してきた。当時「ドーム建築」が隆盛となり、構造・設備技術や施工技術が進化。おのずと大手の組織力が重要な役割を果たすようになったからだ。

 川野氏自身は、97年の開業で収容人数約1200人の「札幌コミュニティドーム(つどーむ)」や、2001年の開業で同約5万3800人(最大時)の「札幌ドーム」など大小のドーム建築の設計に携わった。

 札幌ドームは、公共建築におけるDB(設計・施工一括)導入の本格的な議論が始まる以前に、同種方式を試みた先駆けの整備事業だった。コンペ(設計・技術提案競技)で最優秀に選ばれたのは、建築家の原広司氏を代表とするグループ。その中で、大成建設や当時のドーム建築をリードしていた竹中工務店が協働した。

 「1990年代に各地に生まれた“コミュニティーサイズ”のドームは、事業目的というよりも地方行政による公共サービスを重視する施設だった。それとは別に、スポーツやコンサートなどの興行による集客を前提とする施設の流れが生まれた。後者が進展する中で事業手法が変化し、建築のつくられ方が様変わりした」

札幌ドームの外観。02年のFIFAワールドカップ開催地に名乗りを上げた札幌市が、サッカー、野球兼用のドーム型スタジアムを建設した。01年竣工。大成建設はコンベ段階で原広司グループに参画。原氏の主宰するアトリエ・ファイ建築研究所、アトリエ・ブンク、竹中工務店、米国のシャール・ボヴィスと組んだ。建設会社3社は、施工者として市と契約している(写真:寺尾 豊)
札幌ドームの外観。02年のFIFAワールドカップ開催地に名乗りを上げた札幌市が、サッカー、野球兼用のドーム型スタジアムを建設した。01年竣工。大成建設はコンベ段階で原広司グループに参画。原氏の主宰するアトリエ・ファイ建築研究所、アトリエ・ブンク、竹中工務店、米国のシャール・ボヴィスと組んだ。建設会社3社は、施工者として市と契約している(写真:寺尾 豊)
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