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 五輪に続き、パラリンピックの無観客開催が決まった。「東京2020」大会のために新たに整備された競技施設は、ついに一般観衆を迎え入れることができなかった。今後に向けて後利用時の収支の試算が既にはじかれている他、「大会後工事」の予定も明らかになった。最新写真で都の施設群を概観してみる。

 国際パラリンピック委員会(IPC)、東京2020組織委員会、東京都、国の4者は2021年8月16日、パラリンピック競技大会の「無観客開催」を決定した。

 パラリンピック開催時の観客数に関し、IPCなどは、新型コロナウイルス感染拡大の状況などを踏まえて五輪閉幕後に協議すると告知していた。16日時点で競技会場のある東京都などに緊急事態宣言が発出中だった他、静岡県が緊急事態宣言の発出を要請していた。事態が改善していないため、五輪以上に厳しい措置として原則全ての競技で無観客の開催を決めた。

東京都江東区有明にある「夢の大橋」のたもとに設置された競技期間用聖火台。大会後、東京都がレガシーとして管理する方向で検討中。シンボルプロムナードの国際展示場駅側を保存場所とする案を示している。再設置の設計、施工などに1年程度を見込む(写真:日経クロステック)
東京都江東区有明にある「夢の大橋」のたもとに設置された競技期間用聖火台。大会後、東京都がレガシーとして管理する方向で検討中。シンボルプロムナードの国際展示場駅側を保存場所とする案を示している。再設置の設計、施工などに1年程度を見込む(写真:日経クロステック)
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 翌日の8月17日、政府は、8月20日から9月12日までの期間、緊急事態宣言の対象に7府県、まん延防止等重点措置の対象に10県を追加すると決定。既に対象となっている都道府県も9月12日まで期間を延長し、計13都府県を緊急事態宣言、16道県を重点措置の対象とした。

 五輪の閉幕後、引き続き使用される競技施設ではパラリンピック開催に向けた模様替えが進んでいる。しかし、一般観客を迎え入れることはかなわなかった。後利用に対する期待が高まるが、パラリンピックの閉幕後さらに「大会後工事」を経てからの利用再開となる。

 以下、「東京2020」大会に向けて整備された東京都による新規恒久施設や改修施設に関し、公表されている情報と最新写真で全体を概観してみる。

仮設撤去を含めると大半の「大会後工事」は1年以上

 コロナ禍による開催延期の影響で、各施設の一般開業も当初の見込みより1年程度延びた格好になる。21年6月公表の資料中で東京都は、大会後工事の計画を明らかにした。大会用の仮設物の撤去や、新たな開業に向けた追加工事などがあるため、主には22年から23年に順次「後利用」を開始する。

東京都が2021年6月1日に公表した「東京2020大会開催準備に関わる主な取組について」より。「新規恒久施設等の整備・利用状況」として大会後工事の計画を記している。各施設とも、大会後工事の開始までの間に組織委員会による仮設物の撤去工事が実施される。※1は建築工事の一部継続、※2は運営権者による追加工事(資料:東京都の公表資料を基に日経クロステックが作成)
東京都が2021年6月1日に公表した「東京2020大会開催準備に関わる主な取組について」より。「新規恒久施設等の整備・利用状況」として大会後工事の計画を記している。各施設とも、大会後工事の開始までの間に組織委員会による仮設物の撤去工事が実施される。※1は建築工事の一部継続、※2は運営権者による追加工事(資料:東京都の公表資料を基に日経クロステックが作成)
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 東京都江東区辰巳の「東京アクアティクスセンター」は五輪時に競泳、飛び込み、アーティスティックスイミング、パラリンピック時に水泳に使用。大会時に約1万5000席で運営し、大会後に約5000席の建物に減築する。大会後の運営は事業団・オーエンス・セントラルスポーツ・都水協グループ(東京都スポーツ文化事業団など4団体)が担う。23年春ごろの再開業を見込み、年間100万人の来場を目指す。

新規恒久施設「東京アクアティクスセンター」の南東側外観。設計者:山下設計(基本設計、他)、昭和設計(実施設計)/設計協力者:丹下都市建築設計+アラップ(基本設計、他)/実施設計・施工者:大林組・東光電気工事・エルゴテック・東洋熱工業JV(写真:日経クロステック)
新規恒久施設「東京アクアティクスセンター」の南東側外観。設計者:山下設計(基本設計、他)、昭和設計(実施設計)/設計協力者:丹下都市建築設計+アラップ(基本設計、他)/実施設計・施工者:大林組・東光電気工事・エルゴテック・東洋熱工業JV(写真:日経クロステック)
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東京アクアティクスセンターの内観。五輪競泳時(21年7月24日撮影)。大会後に4階部分の観客席や同階のために設けた外部階段が撤去される(写真:日経クロステック)
東京アクアティクスセンターの内観。五輪競泳時(21年7月24日撮影)。大会後に4階部分の観客席や同階のために設けた外部階段が撤去される(写真:日経クロステック)
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東京都が15年10月に公表した「都立競技施設整備に関する諮問会議(第1回)」資料より。基本設計の概要の中で減築方法を示している(資料:東京都)
東京都が15年10月に公表した「都立競技施設整備に関する諮問会議(第1回)」資料より。基本設計の概要の中で減築方法を示している(資料:東京都)
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 江東区有明の「有明アリーナ」は五輪時にバレーボール、パラリンピック時に車いすバスケットボールに使用。大会時、大会後ともに1万5000席(仮設席を含む)で運営する。アリーナとして国内初のコンセッション(運営権を民間事業者に売却する)方式を導入し、大会後の運営は東京有明アリーナ(電通など10社)が担う。22年夏ごろの開業を見込み、年間140万人の来場を目指す。

新規恒久施設「有明アリーナ」の北西側外観。設計者:久米設計(基本設計、他)/実施設計・施工者:竹中工務店・東光電気工事・朝日工業社・高砂熱学工業JV(写真:日経クロステック)
新規恒久施設「有明アリーナ」の北西側外観。設計者:久米設計(基本設計、他)/実施設計・施工者:竹中工務店・東光電気工事・朝日工業社・高砂熱学工業JV(写真:日経クロステック)
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有明アリーナ屋内から北西側の運河を見る(写真:日経クロステック)
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有明アリーナの内観。五輪バレーボール時(21年7月24日撮影)(写真:日経クロステック)
有明アリーナの内観。五輪バレーボール時(21年7月24日撮影)(写真:日経クロステック)
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有明アリーナの内観。五輪バレーボール時(21年7月24日撮影)(写真:日経クロステック)
有明アリーナの内観。五輪バレーボール時(21年7月24日撮影)(写真:日経クロステック)
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 東京都は19年1月の時点で、各施設に要した整備費を示している(下表)。現在、大会後工事の計画が示された段階だが、それぞれの経費の詳細までは明らかになっていない。

東京都が19年1月に公表した「新規恒久施設等の整備について」より。都の保有する新規恒久施設などの整備費に関し、定期的に精査してきた数字を、さらに見直している(立地や機能、市況などが異なる立候補時の数字は参考値。有明体操競技場以外は恒久工事部分)。国による国立競技場、組織委員会による有明体操競技場の整備費は別途公表値(資料:東京都などの公表資料を基に日経クロステックが作成)
東京都が19年1月に公表した「新規恒久施設等の整備について」より。都の保有する新規恒久施設などの整備費に関し、定期的に精査してきた数字を、さらに見直している(立地や機能、市況などが異なる立候補時の数字は参考値。有明体操競技場以外は恒久工事部分)。国による国立競技場、組織委員会による有明体操競技場の整備費は別途公表値(資料:東京都などの公表資料を基に日経クロステックが作成)
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 東京アクアティクスセンター、有明アリーナと並び、大会に向けて建てられた“3大アリーナ”とされる施設のうち、東京都江東区有明の「有明体操競技場」は組織委員会が整備した。

 有明体操競技場は五輪時に体操、パラリンピック時にボッチャに使用。大会時に1万2000席(仮設席を含む)で運営し、大会後、まちづくりの拠点として東京都が建物を引き取る。後利用の整備費は都が負担し、約1万m2の展示場として10年程度運営する予定だ(開業時期などは未公表)。このため、恒設に準じる仮設施設として205億円を掛けて建てられている。

仮設施設「有明体操競技場」の南西側外観。設計者:日建設計(基本設計、他)、斎藤公男(技術指導)/実施設計・施工者:清水建設(写真:日経クロステック)
仮設施設「有明体操競技場」の南西側外観。設計者:日建設計(基本設計、他)、斎藤公男(技術指導)/実施設計・施工者:清水建設(写真:日経クロステック)
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有明体操競技場の五輪ゲート付近を見る。2階テラスには仮設トイレなどが設置されている(写真:日経クロステック)
有明体操競技場の五輪ゲート付近を見る。2階テラスには仮設トイレなどが設置されている(写真:日経クロステック)
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有明体操競技場の内観。五輪新体操時(21年8月7日撮影)(写真:日経クロステック)
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有明体操競技場の内観。五輪体操時(21年7月24日撮影)。木製の観客席や下部の諸室は大会後に撤去される(写真:日経クロステック)
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有明体操競技場の内観。五輪体操時(21年7月24日撮影)(写真:日経クロステック)
有明体操競技場の内観。五輪体操時(21年7月24日撮影)(写真:日経クロステック)
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有明体操競技場の内観。五輪新体操時(21年8月7日撮影)(写真:日経クロステック)
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