「0570」で始まる番号を使い、原則として発信者が通話料を負担する「ナビダイヤル」。各地の自治体が新型コロナウイルスのワクチン接種予約向けに導入するなど利用が広がっている。一方で、ナビダイヤルへの通話は携帯電話会社が提供する「かけ放題」の対象外となっており、思わぬ高額請求につながるとの指摘がある。
携帯各社のWebサイトでかけ放題サービスの注意書きを読むと、おおむね「他社接続サービス」(あるいは「他社通信提供サービス」)が対象外だと書いてある。ただ、この説明だけでは一般の消費者には分かりにくい。他社接続サービスとは何のことで、それがなぜかけ放題の対象外になるのか――。NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルの4社に理由を聞いてみた。
「料金設計上難しい」
まず各社の説明を総合すると、ナビダイヤルのような他社接続サービスは言い換えれば「他社が料金を設定している」サービスを指し、その電話番号への発信がかけ放題の対象外になるのだという。ナビダイヤルの場合、利用者に対する通話料を決めているのはサービス提供元のNTTコミュニケーションズ(NTTコム)である。業界的にはNTTコムが「料金設定権」を持っている、とも言う。
この料金設定権が携帯のかけ放題とナビダイヤルを巡るモヤモヤのカギを握っている。電話のように2つの地点を結ぶ通信サービスはほとんどの場合、複数の通信会社のネットワークを経由する。料金設定権とは、これらの会社を代表して料金を設定・請求できる権利のことだ。
例えば携帯電話から固定電話にかけた場合、料金設定権は携帯電話会社側が持つ。通話料は携帯電話会社から直接請求されることになる。これに対して携帯電話からナビダイヤルにかけた場合、料金設定権を持つのはNTTコムとなり、通話料を請求するのもNTTコムである。消費者からは通話料を携帯電話会社に支払っているように見えるが、実際には料金回収を代行しているだけだ。
こうした仕組みの背景にあるのは「通信サービスの主要機能を提供している通信会社が料金設定権を持つ」という業界のルールだ。ナビダイヤルの提供には0570番号への通話を複数の電話回線に振り分けるなど、きめ細かい制御を担うNTTコムの設備が不可欠。このため、料金設定権が発信側の携帯電話会社ではなくNTTコムにあるわけだ。
その代わり、NTTコムはナビダイヤルの発信側と着信側の通信会社に対して、それぞれのネットワークの使用料である「接続料」を支払っている。様々な電話サービスからナビダイヤルにかけられるのは、このような仕組みによるものだ。
「他社が料金設定している電話番号への発信がかけ放題の対象外になる」という説明の意味は分かってきた。しかし、まだモヤモヤした部分が残る。なぜ「料金設定権がない」と「かけ放題の対象外」になるのかだ。