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 海外工事に携わる技術者にとって、現地スタッフの育成は仕事の大半を占めるといわれる。日本と同様の工事品質を確保するには、現地の技術者や作業員に自社の「ものづくり」を一から教える必要がある。ただ、実際のものづくりを知らないのは新入社員も同じだ。若手育成では、海外の現地人教育から学ぶべき点が多い。

 「日本であろうが、ミャンマーであろうが、若手に『先輩の背中を見て学べ』は通じない。海外工事では、言葉も文化も違う技術者や作業員に指示を出さなければならないので、そうした従来の日本的な感覚をすぐに捨てられる。また、捨てなければ、人を育てられない」

 こう話すのは、戸田建設国際支店土木部工事室主管1級(課長クラス)の小野寺友樹氏だ。小野寺氏は2015年2月から21年2月までの6年間、ほぼミャンマーのヤンゴン市に駐在し、日本の政府開発援助(ODA)による上水道整備工事を2件手掛けた。現地の技術者や作業員への指導をはじめ、現場実務を担った。

戸田建設国際支店土木部工事室主管1級の小野寺友樹氏。1976年生まれ。2000年4月に戸田建設に入社、東京支店に配属。06年7月に本社土木設計部、14年12月に本社海外事業部。15年2月~21年2月にほぼミャンマーのヤンゴン市に駐在し、上水道整備工事を2件手掛ける。21年3月から現職。21年6月撮影(写真:日経クロステック)
戸田建設国際支店土木部工事室主管1級の小野寺友樹氏。1976年生まれ。2000年4月に戸田建設に入社、東京支店に配属。06年7月に本社土木設計部、14年12月に本社海外事業部。15年2月~21年2月にほぼミャンマーのヤンゴン市に駐在し、上水道整備工事を2件手掛ける。21年3月から現職。21年6月撮影(写真:日経クロステック)
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 小野寺氏によると、現地の技術者や作業員への指示では、それが「なぜ必要か」をきちんと説明しなければならない。例えば、生コンクリートへの加水を禁じる場合には、「水を加えると強度が下がる」とその理由を説いていた。「日本ではこうやっているからでは、ミャンマー人は絶対に納得しない」(小野寺氏)。

 小野寺氏は、現地の技術者や作業員の理解を得るために、手描きの絵や手作りの模型を使って、分かりやすい説明を心掛けた。推進工事の「バッキング」を説明する際には、立て坑と推進管、推進機に見立てたそれぞれ円筒状の簡易な模型を画用紙で作り、推進管が水圧で立て坑側に戻る様子を再現した。

ミャンマーの現場の朝礼で、推進管が水圧で立て坑側に戻る推進工事のバッキング現象を説明している様子。模型は小野寺氏が作った(写真:戸田建設)
ミャンマーの現場の朝礼で、推進管が水圧で立て坑側に戻る推進工事のバッキング現象を説明している様子。模型は小野寺氏が作った(写真:戸田建設)
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