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 i-Constructionやデジタルトランスフォーメーション(DX)の掛け声の下、急速にデジタルツールの利用が進む建設現場――。

 BIM/CIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング/コンストラクション・インフォメーション・モデリング)やVR(仮想現実)・AR(拡張現実)など、様々なデジタルツールを使いこなせなければ、今や建設会社の現場社員は務まらない状況だ。各社にとって、現場社員へのデジタル教育は喫緊の課題となっている。

 鹿島土木管理本部生産性推進部ICT・CIM推進室次長の石黒真聖氏は、同社が土木部門で立ち上げる年間50カ所以上の新たな現場に赴き、BIM/CIMソフトなどデジタルツールの導入を支援している。ツール導入後も定期的に利用状況を尋ね、課題が生じれば現場にすぐに駆け付ける。

鹿島土木管理本部生産性推進部ICT・CIM推進室次長の石黒真聖氏。1972年生まれ。94年に鹿島に入社。以後23年間、国内外で空港や地下鉄、上下水道施設などの建設工事の施工管理を担う。2017年に東京土木支店で工事入札業務・技術開発を担当、18年から本社土木管理本部生産性推進部ICT・CIM推進室に在籍し、主に現場のBIM/CIM活用を推進する。2021年6月撮影(写真:日経クロステック)
鹿島土木管理本部生産性推進部ICT・CIM推進室次長の石黒真聖氏。1972年生まれ。94年に鹿島に入社。以後23年間、国内外で空港や地下鉄、上下水道施設などの建設工事の施工管理を担う。2017年に東京土木支店で工事入札業務・技術開発を担当、18年から本社土木管理本部生産性推進部ICT・CIM推進室に在籍し、主に現場のBIM/CIM活用を推進する。2021年6月撮影(写真:日経クロステック)
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 石黒氏は、新たな現場が立ち上がると、直ちに工事内容を確認。特性などを把握、理解したうえで、工事事務所に連絡を入れ、直接出向く。新型コロナウイルスの感染拡大に伴ってオンラインでのやり取りに置き換わったものの、週1カ所以上のペースで新たな現場を「訪問」している格好だ。コロナ禍前までは実際に全国の新規現場を駆け回っていた。

 「訪問」先の現場では、現場社員の声に耳を傾け、それぞれの状況に応じた最適なデジタルツールの導入を促す。BIM/CIMに不慣れな社員には、その場で自ら簡易な3次元モデルを作って操作手順などを説明する。他の現場の先進的な取り組みも示し、同様のツールの利用を勧める。1週間後には、別の現場で同じ対応を繰り返す。

 「新しい現場を回るときには、デジタルツールを積極的に導入した現場の例を紹介している。そうした取り組みは決して特別なものではなく、どの現場にも適用できると伝えている。会社の利益を生み出すのは現場だ。デジタル教育を通じて、現場一つひとつの底上げを図っていきたい」(石黒氏)

 石黒氏は、玄人はだしのマラソンで鍛えた精悍(せいかん)な相貌と相まって、さながら「デジタル求道者」ともいえる雰囲気を漂わせている。上司である土木管理本部生産性推進部長の横尾敦氏は、次のように評する。

 「(石黒氏は)新たに立ち上がる現場を毎週訪問している他、全国の現場社員やCADオペレーターを対象としたBIM/CIMの集合研修、一定の入社年次に達した社員向けのデジタル教育などを手掛けている。さらに、デジタルツールを活用した技術提案書の作成など工事入札への対応も行っている。その行動力は並大抵のものではない。趣味のマラソンと同様、仕事でも走り続けることができる」

石黒氏がオンラインでBIM/CIMについて講義する様子(写真:鹿島)
石黒氏がオンラインでBIM/CIMについて講義する様子(写真:鹿島)
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