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 新型コロナウイルスの感染拡大で新入社員研修の見直しを迫られている会社は多い。政府や自治体の外出自粛要請を受け、職場での研修を断念するケースも相次いでいる。職場での働き方をイメージできなければ、新入社員は自身の将来に不安を抱く。座学中心のリモート教育では、新入社員の働く意欲の減退を招きかねない。

 日本工営コンサルティング事業統括本部人財・技術統括部人財開発室長の横川真理子氏は、海外部門の新入社員がアジアのグループ会社の幹部とオンラインで交流できる場を設定。コロナ禍の渡航制限下で海外でのOJT(職場内訓練)を受けられない新入社員に「現場感」を味わわせ、そのモチベーションの維持に努めた。

日本工営コンサルティング事業統括本部人財・技術統括部人財開発室長の横川真理子氏。1985年4月に日本工営に入社、コンサルタント海外事業部門の営業部に配属。2003年7月にコンサルタント海外事業本部営業部課長、11年6月に英国工営取締役、13年4月にコンサルタント海外事業本部人材育成室長、20年7月から現職。21年6月撮影(写真:日経クロステック)
日本工営コンサルティング事業統括本部人財・技術統括部人財開発室長の横川真理子氏。1985年4月に日本工営に入社、コンサルタント海外事業部門の営業部に配属。2003年7月にコンサルタント海外事業本部営業部課長、11年6月に英国工営取締役、13年4月にコンサルタント海外事業本部人材育成室長、20年7月から現職。21年6月撮影(写真:日経クロステック)
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 「海外事業に憧れて入社した社員にとって、外国で研修を受けられないのは非常につらいことだ。少しでも海外業務を疑似体験してもらえたら」。横川氏はそう考え、2020年度の新入社員研修でオンライン交流会を初めて実施した。

 交流会に出席したのは、海外部門の新入社員20人余りと、インド、フィリピン、バングラデシュの3カ国のグループ会社の幹部ら。インド法人からは役員クラス、他の2法人からは技術部門のマネジャークラスが参加した。「新入社員と現地人幹部との触れ合いが目的なので、日本人の出席は遠慮してもらった」(横川氏)。

 交流会は、グループ会社ごとに開催日を分けて実施。グループ会社の幹部が、自社の技術やプロジェクト、社内行事などを説明したうえで、日本工営の新入社員の質問に答える形を取った。両者の会話は全て英語で実施。英語を流ちょうに話せる新入社員は、積極的に各社の幹部に質問した。

 グループ会社の幹部らは、「このプロジェクトで君たちも一緒に働かないか」などと新入社員を激励。コロナ禍で海外での仕事の見通しが立たず、強い不安に駆られている新入社員にとって、幹部らの言葉は大きな心の支えとなった。

 グループ会社の幹部らも、日本工営の新入社員と直接話をするのは初めてだった。幹部らは「フェース・ツー・フェースでコミュニケーションを取れたのは非常に良かった」と、オンライン交流会を高く評価。今後の継続を強く望んだ。

 横川氏は言う。「日本工営の新入社員が海外のプロジェクトに携わる場合、通常、現地のグループ会社の幹部とじかに接する機会はほとんどない。グループ会社の幹部にしても、日本工営の新入社員と直接触れ合う機会はまずない。コロナ禍が逆に功を奏し、両者にとって非常に有意義な研修になった」。

 20年度は、新入社員の入社時期と政府の緊急事態宣言発出のタイミングが重なった。横川氏は直前まで、新入社員研修を例年通り実施するつもりで準備を進めていた。「土壇場で研修内容を全て変えなければならず、大変苦労した」(横川氏)。

 それでも、横川氏がオンライン交流会を実施できたのは、周囲に敵をつくらない誠実な人柄に加え、入社以来30年近くにわたる海外営業で培った気配りや目配りがグループ会社の幹部ら関係者の心を動かしたからだ。