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 多様な人材は職場に活力を生み、企業の持続的な成長を促すといわれる。多様な人材がその能力を最大限発揮できるようにする「ダイバーシティー経営」に取り組む企業も増えている。多様な人材の育成は、「人づくり」の重要なテーマだ。

 「人材育成とは、その人が本来持っている力、その人らしさを伸ばす手助けをすることだ」

 こう語る建設技術研究所東京本社都市部長の桂謙吾氏は、部下とのコミュニケーションを密にし、一人ひとりの「素(す)」を見極めたうえで、それぞれの能力を高める育成手法を実践している。

 桂氏にとって、技術者の成長とは、社会の動きや顧客のニーズに合わせて自身の強みを生かしながら、社会や顧客に資する新たな価値を創造していくプロセスに他ならない。部下がそうした能力を養えるよう支援する。それが育成者の務めだと桂氏はみる。そのために、部下の本来の姿である素の把握に努めている。

建設技術研究所東京本社都市部長の桂謙吾氏。1969年生まれ。92年に建設技術研究所に入社、大阪支社道路本部技術第2部に配属。2011年4月に九州支社道路・交通部次長、18年4月に同部部長、20年4月から現職(写真:日経クロステック)
建設技術研究所東京本社都市部長の桂謙吾氏。1969年生まれ。92年に建設技術研究所に入社、大阪支社道路本部技術第2部に配属。2011年4月に九州支社道路・交通部次長、18年4月に同部部長、20年4月から現職(写真:日経クロステック)
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 桂氏は、アルバイトなどを含めれば、総勢約60人に及ぶ東京本社都市部のトップを務める。全国の都市部門を統括する立場だ。にもかかわらず、そうした重職らしからぬフットワークの軽さで、若手社員と気軽に接している。

 同部PFI・PPP室長の長南政宏氏は、「新入社員とあれだけ仲のいい部長を見たことがない」と証言する。長南氏は、1年半前に九州支社の道路・交通部長から転任してきた桂氏が、新入社員と気さくに話している姿を見て、「あまりいないタイプの部長だ」と驚いた。

 長南氏によると、桂氏は新入社員に自ら直接声をかけ、「今こういう仕事をしているけど、一緒にやってみない?」「この仕事、面白くない?」などと、仕事への興味と意欲を駆り立てる。新入社員もうれしそうに桂氏との会話に応じている。

 桂氏は、新入社員だけでなく若手や中堅にも、モチベーションを高める前向きな言葉をかける。「(成功の)可能性しか感じない」はよく使う表現の1つだ。

 例えば、ある業務に取り組むかどうかを部内で議論していたときのこと。部員の多くが「これはリスクが高い」と尻込みする中、桂氏は「いや、俺、うまくいく想定しかつかないんだけど」と事もなげに言う。すると、消極的になっていた部下も、「そこまで部長が言うなら、やってみるか」となる。「もちろん、部長がけつ(責任)を持ってくれる」(長南氏)。