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 携帯大手のNTTドコモやKDDI、ソフトバンクが健康・医療分野の事業に本気で取り組み始めている。各社が狙うのは健康増進から医療までを一気通貫で支援するサービスだ。各社がそれぞれ保有する数千万の顧客基盤とスマートフォンを活用し、健康・医療に関する行動様式を変えようとしている。海外に比べて後れをとってきた日本の健康・医療分野のデジタル化を後押しする可能性がある。

携帯大手の強みをヘルスケア・医療分野に生かす
携帯大手の強みをヘルスケア・医療分野に生かす
(作成:日経クロステック)
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 これまでの健康・医療に関する多くの人の行動様式は、「体調不良を感じてから病院に行く」というものだ。携帯大手が得意とするAI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)、5G(第5世代移動通信システム)などの技術を組み合わせて、体調不良を感じる前の健康管理の段階から疾患の兆候を検知したり、発症を遅らせたりする。「無理に行動変容を起こすのではなく、日常生活の中で楽しく自然に健康維持や増進ができる世界を目指す」とソフトバンク テクノロジーユニット AI戦略室 ヘルスケアソリューション開発部 部長の浦野憲二氏は話す。

携帯大手は健康増進と医療を橋渡しするサービス構築を目指す
携帯大手は健康増進と医療を橋渡しするサービス構築を目指す
(作成:日経クロステック)
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 スマホを活用した新しい健康・医療に関する行動様式とは例えばこうだ。健康なときは歩数や体重、運動量などのデータをスマホで収集しながら健康増進に努め、体調不良を感じた際にスマホで健康医療相談を受ける。健康医療相談の結果、適切な診療科にたどり着き、早期に疾患を発見してすぐに治療を始められる。必要に応じてアプリからオンライン診療やオンライン服薬指導も受けられる。

オンライン診療の企業と続々連携

 携帯大手3社がこれまで取り組んできたのは、健康増進や健康医療相談などヘルスケア分野のアプリの提供だ。そこに新しく医療分野のオンライン診療などを取り入れ、健康増進と医療の橋渡しを担う。KDDIは2021年6月、同社の健康支援アプリ「auウェルネス」を用いたオンライン診療サービスを開始した。オンライン診療システム「curon(クロン)」を手掛けるMICIN(マイシン、東京・千代田)と協業して実現したもので、auウェルネスから予約や問診、診察、決済、処方箋送付の手続きまでを実施できる。9月からはオンライン服薬指導のサービスも始める予定だ。KDDIが保有する約3000万の顧客基盤を活用する。

 ソフトバンクのグループ会社であるヘルスケアテクノロジーズ(東京・港)もMICINと提携した。ヘルスケアテクノロジーズのオンライン健康医療相談のアプリ「HELPO(ヘルポ)」からオンライン診療を受けられる。一方ドコモは21年4月、オンライン診療サービスを手掛けるメドレーと資本・業務提携することに合意。今後、オンライン診療を共同で運営するサービスを開始する予定だ。