全2344文字
PR

「お得」を「健康」につなげる

 携帯大手の強みは利用者との直接的なつながりだ。オンライン診療を手掛けるMICIN代表取締役の原聖吾氏は、携帯大手との連携がオンライン診療の普及に弾みがつくと期待する。21年6月に実施したKDDIとの記者会見で、「オンライン診療は各年代からの認知度がかなり高まった。一方で現状の課題は、患者や健康不安がある人が、実際に体験する機会が限られていることだ」と指摘した。

auウェルネスを用いたオンライン診療の様子
auウェルネスを用いたオンライン診療の様子
(出所:KDDI)
[画像のクリックで拡大表示]

 MICINの調査によると、オンライン診療を利用した患者はその後もオンライン診療を継続する傾向にあるという。オンライン診療を手掛ける企業は医療機関とのつながりはあるが、利用者との接点を構築するには限界があった。携帯大手には、患者や健康不安のある人の意識や行動様式を変える役割が求められている。

 利用者の意識や行動様式を変えうる手段はある。例えば携帯大手がもつ金融サービスだ。各社が展開するポイントサービスと連携することで、「健康になるため」ではなく「得だから」という動機でサービスを使い始めてもらえる。

 ドコモが提供する「dヘルスケア」のアプリは、利用者が歩数や体重を計測したり健康に関するクイズに答えたりすることで、買い物などに使えるdポイントを得られる。「自分の健康に関心がない人でも、ポイントがたまるとしたら興味をもってくれるかもしれない。そうしたアピールを利用者に直接できるのは強みだ」と同社ビジネスクリエーション部ヘルスケアビジネス推進室長の出井京子氏は話す。dヘルスケアのダウンロード数は現在、800万を超えたという。

データ収集のハブへ

 携帯大手3社は利用者の行動様式の変化により、健康・医療データの蓄積と利活用を目指す。データを既存の製品と組み合わせたり、新たなサービスの開発に生かしたりする。データを解析するAI技術の開発にも力を入れる。ソフトバンクは慶応義塾大学や国立循環器病研究センターとの共同研究を通じ、疾患の早期発見や予防に利用するための技術開発を急いでいる。

 スマホを活用した健康から医療の新しい行動が定着すれば、健康・医療分野でサービスを手掛ける企業にとっても追い風となりそうだ。製薬企業など既存の医療分野のプレーヤーも携帯大手の動きに期待を寄せる。医療分野の企業もなかなか健康・医療情報の収集と活用を進められていないからだ。

 「健康や医療情報が様々なところに散在している。携帯大手がハブとなり電子カルテメーカーなども巻き込んで情報の集約化が進めば、患者、医療従事者、製薬企業などにとってメリットが大きいだろう」とデジタルヘルスや創薬分野の投資を手掛ける新生キャピタルパートナーズ パートナーの栗原哲也氏は話す。

 健康・医療分野にはGAFA(米グーグル、米アップル、米フェイスブック、米アマゾン・ドット・コム)も乗り出している。日本国内では携帯大手3社が存在感を発揮できるのか。利用者の行動をどこまで変えられるのかに注目が集まりそうだ。