成長戦略として「Beyond Carrier(ビヨンドキャリア)」を掲げるソフトバンク。通信事業を成長させながら新領域の事業の拡大を目指すもので、通信を介してあらゆるヒト・モノ・コトをつなぎ、新しい体験を創出する。健康・医療分野も新事業の展開先として視野に入れる。同社で健康・医療の事業を手掛ける部署の1つが、ヘルスケアソリューション開発部である。同部が健康・医療分野で目指すのは「自動ヘルスケア」の実現だ。担当者は「約30年後には『自動ヘルスケア』の時代が到来するだろう」と展望する。
自動ヘルスケアとは、サービス利用者に行動変容を無理強いするのではなく、健康維持や健康増進につながる生活が自然にできる世界を指す。そのための手段として、利用者が楽しく使えるアプリや、利用者の同意の下に自動で健康関連のデータを収集する仕組みの活用を想定している。「楽しく健康維持や健康増進できる例としては、『ポケモン GO』が分かりやすい」(ソフトバンク テクノロジーユニット AI戦略室 ヘルスケアソリューション開発部 部長の浦野憲二氏)。
ポケモン GOの利用者がポケモンを収集するには、屋外を歩き回る必要がある。ゲームを楽しむうちに自然に歩数が増え、健康維持・増進につながる。「我々は『知らないうちに行動を変えていて、気付いたら健康になっている』という世界観を目指している」と浦野氏は話す。
自動ヘルスケアの世界を実現するには、個人の健康・医療分野のデータと、それらのデータを解析する技術が必要だ。ソフトバンクは現在、データを解析して疾患を予防する技術の開発に注力している。例えばAIを用いて脳卒中などの早期発見や高齢者の虚弱状態(フレイル)の兆候を予測するアルゴリズムの構築だ。大学などと共同で研究を進めている。
慶応義塾大学と共同でスマホやウエアラブル端末を利用し、歩行速度などのデータから高齢者のフレイルを予測するアルゴリズムの開発を目指している。2021年度末の完成を視野に入れる。また国立循環器病研究センター(国循)と共同で、血圧や脂質、血糖値などのデータから疾患リスクや予兆を検知するアルゴリズムなどの開発を検討中だ。他にも国循が保有する臨床データやCT画像などを活用し、冠動脈疾患の診断支援やリスク予測の技術開発を目指す。