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米Appleが2021年5月に発売した新型「iPad Pro」の液晶パネルで採用したミニLEDバックライト。その動作や実装を分析するために、本製品を分解していく。今回は、ミニLEDバックライトの基板の断面などを観察し、実装の様子などを分析する。

 前回は、米Apple(アップル)が2021年5月に発売した新型の「iPad Pro」の中で、ミニLEDバックライトを搭載した液晶ディスプレーを採用するiPad Pro(2021年モデル)の12.9インチ版(以下、iPad Pro(2021))を分解し、ミニLEDバックライトのみを点灯させて駆動制御の様子などを確認した。続いて、ミニLEDの実装について分析していく。

 Appleが公式で1万個以上使用していると発表している、本製品のミニLEDの実装状態を観察していく。分割領域を数えると、長辺が59ブロック、短辺が44ブロックで、合計2596個となり、公表されたローカルディミング数と一致した(図1)。各ブロックはシリコーン製の白いリブで区切られていて、その内側は透明なシリコーンで満たされていた。

 どちらも柔らかい素材で、LEDの光を導光し拡散させることに加え、熱を拡散させる役割があるとみられる。写真(図1(b))だと目の錯覚かリブの部分はへこんで見えるが、実際には凸状であり、隣のブロックへ光が漏れることを防止しているようだ。

(a)ミニLEDバックライトのLED
(a)ミニLEDバックライトのLED
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(b)1ブロックの拡大写真
(b)1ブロックの拡大写真
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図1 合計1万384個のLEDを実装
ミニLEDバックライトには、ローカルディミング用のブロックが縦44×横59の2596個並んでいる(a)。約4.3mm四方の1ブロックには4つのLEDが実装されている。写真では分かりにくいが、ブロックの境界は凸状の白いリブで区切られていて、LED実装部分が凹んだ形になっている(b)。LEDの大きさは約200µm角で厚みは約50µm、実装間隔は約2.3mm。実装されたLEDは全面で合計1万384個となる。(写真:日経クロステック)

 1ブロックには、LEDが4つ、ひし形のような配置で実装されていた。全面で1万384個のLEDを実装していることになる。ブロック内のLEDは4つまとめて駆動しており、ブロック内の1つを取り外すと4つ全ての発光が消えたことから、直列で接続されているとみられる。拡大写真では、4つのLEDを一筆書きでつないでいる線のようなものが薄く見えている。ドライバーICとみられるチップは、ミニLEDバックライト面の長辺の一辺に実装されていた。

約200µm角のLEDチップ

 LEDは透明シリコーンの内部に埋まる形で実装されている。LEDを真上から見ると、中央が黒く、その左右に銀色の部分が見える。銀色はLEDを実装するはんだで、フリップチップ実装だとみられる。

 中央の黒い部分はメタル材のプレートのようなものが付いていた。点灯時に光を遮っていたことから、遮光用とみられる。上面を遮光することで左右に光を出し、ブロック内の光の均一性を高めているとみられるが、このようなLEDの遮光は珍しい。「メタル材で遮光したLEDは初めて見た」(LEDの実装に詳しい技術者)という。

 拡大写真を用いてLEDの大きさを計算すると、およそ190µ~200µm角だった。拡大しながらであれば、ピンセットでもつまんで取り外せる大きさだ。実際に取り外してみると、はんだ部分ときれいに分離された。

 「LEDは約190µ~200µm角で、ぎりぎりミニLEDと呼べるほどの大きさだった」(LEDの実装に詳しい技術者)。ミニLEDに明確なサイズの定義はないものの、自発光型のLEDディスプレーの場合、直径が50µ~200µmほどのLEDを発光部に用いたものをミニLED、直径が50µm以下ならマイクロLEDと呼称することが多い。「このサイズならぎりぎり、LEDをピックして従来のように実装できるが、もっと小さくなると同じ方法では実装できないだろう」(同技術者)。

LEDは1枚のPCBに実装

 LEDは大きな1枚のプリント基板(PCB)に実装されていた。PCBにはディスプレーの裏側からアクセスするのが早い。裏側を覆っていた銅箔付きの黒いシートを剥がすと、PCBの裏面が見えた(図2)。

(a)ミニLEDの基板の裏面
(a)ミニLEDの基板の裏面
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(b)切り出した基板
(b)切り出した基板
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図2 ミニLED基板を切り出す
ミニLEDバックライトの基板を裏面から観察する(a)。拡大すると、基板内の配線とみられる網目模様と横線模様、そしてスルーホールが見える。基板の端を切り出した(b)。LEDを顕微鏡で斜めから拡大すると、遮光用のメタル材が灰色に見え、その下に透明な部分が確認できる。透明な部分はLEDのサファイア基板だとみられる。(写真:日経クロステック)

 PCBの裏面には3種類の模様が目立つ。まず3本ずつ上下に走る網目状のもの、次に9本ずつ左右に走る横線のもの、そして一定間隔で配置されたスルーホールと思われる円形の模様である。

 カッターでPCBの端のあたりを四角く切り取ってみた。基板の端は、白いプラスチック製の枠にくっ付いていた。この白い枠は、黒いシートなどでディスプレーを接着していて分解時に切り離した部分のものだ。

 切り出した基板のLEDを顕微鏡で斜めから観察すると、真上から見たときとは異なる色で見えた。LED上面の灰色部分がメタル材で、その下の透明に見えるLED中央部分はサファイア基板だと推測する。