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 球面モーターは、1個の球状歯車に2個の鞍状歯車を組み合わせる。2個の鞍状歯車を対向させるように配置しても良いし、旋回軸が直交するような位置に配置しても良い(図7)。

鞍状歯車を直交する位置に配置した場合
鞍状歯車を直交する位置に配置した場合
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鞍状歯車を対向する位置に配置した場合
鞍状歯車を対向する位置に配置した場合
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図7 組み立てた状態の球面モーター
(出所:多田隈理一郎氏)

 ピッチ回転とロール回転という回転2自由度で動く鞍状歯車2個の動きを制御することで全方向(回転3自由度)に球状歯車を回転させるわけだ。 球状歯車と鞍状歯車の歯面は互いに滑るようにも動くため、2つの鞍状歯車を矛盾なく動かせる。「2個の鞍状歯車を思い付いたことが、開発のブレークスルーになった」と阿部氏は振り返る(動画3)。

動画3
(出所:多田隈理一郎氏)

課題は耐久性とトルク制御

 開発する球面モーターの用途として想定するのは、部品組み立てに使うロボットアームの肩や手首、ドローンに使うカメラの首振り機構などだ(図8)。「ホルダーの設計次第で、可動範囲はかなり広くできる」と多田隈理一郎氏は力を込める。なお球状歯車は、その外周部と接する樹脂製のホルダーで支持し、鞍状歯車との間隔を一定に保っている。

図8 ロボットアームを想定した駆動実験の様子
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図8 ロボットアームを想定した駆動実験の様子
(出所:多田隈理一郎氏)

 実用化に向けての課題としては、耐久性やトルク制御などを挙げる。現在は、球状歯車や鞍状歯車をエンジニアリングプラスチックで造っている。低コストで製造できるものの、ロボットアームの関節など負荷が高い部分で使う場合には耐久性が不十分な可能性がある。金属でどのように造るかなどの検討が必要だ。かなり複雑な形状だが、「金属3Dプリンターであれば実現できるかもしれない」と同氏は期待する。

 一方、出力軸のトルク制御に関しての検討も今後進めていくという。2つの鞍状歯車の動きで球状歯車を動かすので、両者の相対的な角度やかみ合う歯面位置などが常に変化し、その制御は簡単ではない。既に球状歯車の速度や角度については制御方法を確立しているが、球状歯車のトルク制御については今後の課題となっている。速度の安定化や位置決め精度をさらに向上させるためには、トルク制御も必要となりそうだ。

 阿部氏らは現在、21年9月にオンライン開催される日本ロボット学会学術講演会に向けて関連技術の開発を進めているという。「ロボットの関節以外にも、車輪などの方向性も考えており、あえて用途は限定していない。実用化へのノウハウを求めており、共同研究先の企業も探していきたい」と東北大学大学院の多田隈建二郎氏は語る。