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 マツダが1989~98年に販売した「NAロードスター(初代ロードスター)」。発売後約30年たった2017年、新車同様によみがえらせる「NAロードスターレストアサービス」を同社は開始した。川崎重工業も、1970年代に販売された大型2輪車「Z2」「Z1」のシリンダーヘッドの再生産を2019年に決定、既に1000個を生産した。

 これらの製品のユーザーは、数十年も使い続けて、製品に対して強い愛着や思い入れを持つ。スタイルや性能を気に入っているだけではなく、ユーザーは自身の数十年の思い出や感情を製品に投影して見ている。その愛着や思い入れを含めた製品の価値を、マツダは「感情的価値」と呼ぶ。

感情的価値の強化を目指す

 現代の多くの製品は、スマートフォンなどのハイテク機器に代表されるようにライフサイクルが短くなっている*1。ユーザーはさまざまな競合メーカーから次々に発売される製品の新機能を心待ちにしつつ、数年程度で買い替える。自動車のような耐久消費財でも、古くなれば買い替えるのが普通だ。

*1 2016年6月発行の「製造基盤白書(ものづくり白書)」では製品ライフサイクルが10年前と比較してどのように変化しているかを調査しており、調査対象の全業種で短縮傾向にあると分かった。「短くなっている」と回答した企業が最も多かったのが「電気機械」の34.7%。ただし「輸送用機械」は、「短くなっている」とした企業が16.3%あったものの、14.9%は「長くなっている」との回答だった。

 一方でNAロードスターやZ2・Z1は、長年使われる中で、多くのユーザーにとっての感情的価値を備えるに至った製品だ。ユーザーは自分の製品が壊れたら他の車に乗り換えればよいとは思っていない(図1)。同型の中古車でさえ代わりになるとは限らない。

図1 NAロードスターが持つ感情的価値
図1 NAロードスターが持つ感情的価値
マツダが「軽井沢ファンミーティング」でNAロードスターのユーザーに対して「愛車にいつまで乗りたいと考えていますか」と聞いたアンケートの結果。144件中マツダが例示した79件を図にした。(マツダの資料を基に日経ものづくりが作成)
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