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 技術開発や標準規格のアップデートに伴い、パソコンや周辺機器のスペックは複雑さを増し、本質的な違いが分かりにくくなっている。その違いで実際の便利さや使い勝手はどう変わるのか。パソコンの基本スペックを再検証する。

CPUの自動オーバークロック性能を見極める

 今どきのCPUは、動作クロックの仕組みが複雑だ。CPUのスペックデータとしては、動作クロックを示す複数の数値がある(図1)。基準となるベースクロック以外は、自動オーバークロック機能が働いたときの最大値(ブーストクロック)だ。

CPUのベースクロックとブーストクロック
CPUのベースクロックとブーストクロック
図1 CPUの動作クロックには基準となるベースクロックと、条件を満たすと利用できるブーストクロックがある。仕様に記載されるのは最大時の動作クロックだ。画像はインテルのWebサイトの製品情報ページ
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 最新のインテル製CPUは自動オーバークロック機能が3種類あり、それぞれに最大クロックが定められている(図2)。CPUによっては3、4種類の動作クロックが存在することになる。さらに、動作するコア数ごとの最大クロックもあり、一部のCPUでは公表されている(図3)。

インテルCPUには複数の自動オーバークロック機能
インテルCPUには複数の自動オーバークロック機能
図2 米インテルの現行CPUは、ほとんどのモデルがブースト(自動オーバークロック)機能を備えている。多くはTurbo Boost 2.0に対応しており、特に上位モデルのCPUは3種類のブースト機能に対応する
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コア数ごとの最大クロックが公表されることもある
コア数ごとの最大クロックが公表されることもある
図3 基本的にブースト時の動作クロックの詳細は非公開。ただ、2021年5月にインテルが発表した「Tiger Lake H」シリーズの資料にはコアが1、2、4、6、8個動作しているときの最大クロックがそれぞれ記載されていた
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 このように複雑なのは、CPUが規定の温度や消費電力の範囲内でできるだけ高い性能を出すため、動作クロックを細かく制御しているからだ。最初は高いクロックで動作し、温度が高くなるとクロックを下げて発熱を抑える(図4)。ブーストクロックも、上下を繰り返す中で到達することがある最大値だ(図5)。

状態に応じて動作クロックは変化する
状態に応じて動作クロックは変化する
図4 「CINEBENCH R23」(Maxonコンピューター)の「CPU(Multi Core)」テストを実行した際の動作クロックの遷移を記録した※。CPU全体に負荷がかかっていると、熱が蓄積されることで、少しずつ動作クロックが落ちている ※「HWiNFO32」(HWiNFO)のログ機能を使用してCPUの動作クロックを記録し「Core Clocks」の値を採用した。これ以降も同じ
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1コアでも最大クロックは維持できない
1コアでも最大クロックは維持できない
図5 CINEBENCH R23の「CPU(Single Core)」テストを実行した際の動作クロックの遷移。テスト中は終始ターボ機能が働いているのが分かる。ただ、仕様上の最大クロックにはほとんど達していない
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 CPUの発熱量はTDP(Thermal Design Power)という指標の値で示される。さらに第11世代CoreシリーズではcTDP(Configurable TDP)が導入され、パソコンメーカーが一定の範囲内でTDPを決められるようになった。図4と図5で示したベースクロックはcTDPを最大にしたときのもの。図4では動作クロックがベースクロックを下回っているので、テストで使用したHP Spectre x360 14-eaのcTDPが少し低く設定されていた可能性がある。

発熱のバランスを取る

 CPUは全てのコアに負荷が掛かると発熱量が大きくなるため、動作クロックを下げて調整する。一方、1個のコアだけに負荷が掛かっている場合は、余裕があるため動作クロックを引き上げる(図6)。動作クロックが下がっても、全てのコアを使う方が総合的な性能は高い。しかし、アプリによってはコアを全て使い切らないこともある。図6の仕組みは、そうしたときに少しでも性能を上げるためのものだ。このように、最新のCPUは性能と発熱のバランスを取るための工夫が盛り込まれ、クロックの数値だけでCPU性能を判断するのが難しくなっている。

使用するスレッド数が多いほどクロックは下がるが性能は上がる
使用するスレッド数が多いほどクロックは下がるが性能は上がる
図6 使用するスレッド数が少ないと、発熱の総量に余裕があるため、その分動作クロックを上げられる。しかし、総合的にはスレッド数の多い方が性能は高くなる
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 動作クロックは主にCPUの温度で変化する。そのため、図7のようなノートパソコン本体を冷やすクーラーを使って温度を上がりにくくすれば、CPUはより高いクロックで動作する。この製品を使って性能を測ったところ、図6と同じテストのスコアが約7%上昇した(図8)。無視できない性能差だ。

ノートパソコンクーラーで冷やすと性能が上がる
ノートパソコンクーラーで冷やすと性能が上がる
図7 CPUの動作クロックが下がるのは主に発熱が原因。クーラーを使って冷やすと、動作クロックを少し上げられる。写真はミヨシの「NSF-01/BK」
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図8 図6と同じテスト(スレッド数8)で、図7のクーラーの有無による性能差を調べた。クーラーがあると平均動作クロックは2608MHzでスコアは約7%上がった
図8 図6と同じテスト(スレッド数8)で、図7のクーラーの有無による性能差を調べた。クーラーがあると平均動作クロックは2608MHzでスコアは約7%上がった
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