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 欧州連合(EU)が検討する電池のリサイクル規制――。リチウムイオン電池の部品供給網(サプライチェーン)をEU域内に構築しにかかる強引な思惑に対し、日本企業には戸惑いが広がる。ただリサイクル技術で日本企業には長年の技術の蓄積がある。「危機」を「好機」に変えるべく、EUに飛び込む企業が登場し始めた。

EUがもくろむ電池リサイクルを活用した産業振興。日本企業はどう対応するのか。(出所:Audi)
EUがもくろむ電池リサイクルを活用した産業振興。日本企業はどう対応するのか。(出所:Audi)
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 2021年4月に発足した電池サプライチェーン協議会。国内電池関連メーカー74社と多くが集まる同協議会で、電池のリサイクルは「最もホットな話題の1つ」(同協議会関係者)と、日本企業の関心はうなぎ登りだ。

 同協議会はもともと、中国がリチウムに関する標準化活動を始めることに備えて、国内の関連数社で立ち上げようとしたもの。ところが設立検討時期が20年12月のEU電池規制案発表と重なり、危機感を覚えた日本企業がこぞって殺到して参加企業が膨らんだ経緯がある。

 「技術を丸裸にされかねない」――。

 EU電池規制案で危ぶまれるのは、欧州製電池が優遇されて日本製電池の価値を下げられることにとどまらない。日本の電池関連メーカーが身構えるのが、リサイクル材料の使用量や、ライフサイクル全体にわたる二酸化炭素(CO2)排出量を開示する「カーボンフットプリント」の申告を義務付ける項目があることだ(図1)。

図1 EU電池規制案の骨子
図1 EU電池規制案の骨子
欧州委員会の公表資料を基に日経クロステックが作成。
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 詳細はこれからだが、電池メーカーの間には「技術やサプライチェーンを丸裸にされるのではないか」(国内電池メーカー幹部)との危機感がつのる。自社の電池にどの材料をどの比率で配合しているのかは「競争力の源泉」である。カーボンフットプリントの開示も、メーカーとしては避けたいのが本音。コストと連動するエネルギー使用量に直結する情報となる。