既に多くの企業が各種イジングマシンを利用したモノや人の組合せ最適化に取り組み始めた。最大のメリットはやはり問題の設定が容易で比較的短時間に答えが出る点。現状では多くがPOC(実証実験)だが、コロナ禍明けにも実運用を検討しているところは多い。事例第1弾では、KDDI総合研究所が5G(第5世代移動通信システム)の無線周波数を複数の事業者間でダイナミックに共用するためにイジングマシンを用いた例を紹介する。
事例1 [KDDI 総合研究所]
5Gと他システムの周波数共用 利用チャネルを分単位で計算
無線通信システムの課題は、使い勝手のよい周波数帯に空きがないこと。そこで、現在、各国で検討が進んでいるのが、異種通信システムでの周波数共用である。特に、移動通信システムと、衛星通信、固定無線アクセス(FWA)などとの共用が議論されている。この周波数共用は、他のシステムが通信に使っていない時間に、その複数チャネルをさまざまな基地局数に割り当てる組合せ最適化問題に相当する(図1)。
5G(第5世代移動通信システム)は前世代までの移動通信システムと比べて用途が広く、周波数チャネルへの需要が高い。KDDI総合研究所 先端技術研究所 次世代インフラ2部門 電波応用グループの伊神皓生氏は、「特にローカル5Gが盛んになると、ダイナミックな周波数割り当て技術が欠かせなくなる」と語る。同社はこうした周波数割り当て問題を効率的に解く手法を研究開発している。