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ガラスメーカーであるAGCは、ガラス板からさまざまな寸法のガラスを効率よく切り出す”切り方”を、イジングマシンで決められるかどうかを検証した。現状ではD-Waveの量子アニーリング(QA)マシンより、東芝のシミュレーテッド分岐マシン(SBM)のほうが良い結果が出ているという。

 AGCはイジングマシンを利用した組合せ最適化で板ガラスから必要な形状のガラス(アイテム)を切り出す難題に挑戦した。これが難題なのは、ガラス板には、端から端まで切らざるを得ない「ギロチンカット制約」があるからだ(図1(a))。

図1 ガラスなので切り方に強い制約あり
図1 ガラスなので切り方に強い制約あり
AGCが取り組む、「ギロチンカット制約付き板取り問題へのイジングマシンの適用」の概要。板がガラスであるため、板の切り方に大きな制約がある(a)。AGCは、板取りで余った部分(ロス)を数え上げて目的関数とし、それを最小化するイジングモデルを構築した(出所:AGC)。
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 目的関数は、最終的な余剰部分の面積(図1(b))。この値が小さいほど、効率の高い板取りができたことになる。イジングマシンにはカナダD-Wave Systemsの量子アニーリング(QA)マシンと、米Amazon.comの「AWS」上で動く東芝のシミュレーテッド分岐マシン(SBM)を利用した。結果は、SBMの圧勝(図2)。QAマシンは6アイテム以上を切り出す課題をうまくこなせなかった。「全結合でないD-Waveはグラフ埋め込みのパラメーター調整が難しい」(AGC 先端基盤研究所 共通基盤技術部 ソフトサイエンスチームの喜田豪氏)という。ただし、SBMが出力する良解も、ベテランにとって満足する水準には必ずしも届いておらず、今後は貪欲法など別のソルバーも検討するという。

図2 D-WaveのQAマシンは6アイテム以上の問題をうまく解けない
図2 D-WaveのQAマシンは6アイテム以上の問題をうまく解けない
さまざまな、取り出したいアイテムの組11例について、D-Waveの2000量子ビットのQAマシンと東芝のSBMで各組1000回ずつの最適化を実行した。D-WaveのQAマシンは全結合マシンではないためか、6アイテム以上のケースでは、オレンジ色の“良解”を全く得られていない。この程度の問題規模ではグラフ埋め込みによって全結合にも対応できるはずだが、結果としては機能していない。一方、東芝は11アイテムまでは多少なりとも良い解が得られている。(図:AGC提供の資料に日経クロステックが加筆して作成)
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