豊田中央研究所は、交通信号機の制御の最適化を地域単位で実現するために量子アニーリング(QA)やシミュレーテッドアニーリング(SA)の利用を検証した。交差点が格子状に2500カ所にある街を想定してイジングモデルを適用すると、車の直進性が高いケースではQAのほうがよい結果が得られたという。
交通信号機の点灯タイミングによって、道路の渋滞状況は大きく変わる。豊田中央研究所は、広域道路網の信号機1つひとつの点灯を制御して、理想の交通状態に近づける組合せ最適化問題を設定した。これまでの制御方式と異なるのは、道路網全体の信号機を一度に最適化するところである(図1)。
東西南北の車の流れを均一に
今街中に設置されているほとんどの信号機の点灯方式は時間周期方式だが、近年、新しい方式の実用化が始まった。それが部分最適方式である。交差点に設置したセンサーが交通量を測定し、それを信号機の点灯にフィードバックする。当該交差点付近の最適化が期待できる。ところが、この制御方式は周囲の信号機との連携がなく、道路網全体の最適化にはならない。そこで豊田中研では、各信号機同士のつながりを考慮した全体最適方式に乗り出した。
同社が想定した道路網は次のようなものだ(図2)。東西方向と南北方向に伸びるL本の道が、等間隔で直角に交わっている。各交差点には「東西に通行可能」と「南北に通行可能」の2値のいずれかを取る信号機がある。道は片側1車線で、通行する車は各交差点で直進か左折か右折をする。
同社はこうした道路網で、「東西方向の道と南北方向の道における車の流れやすさが同じ」であることを最適な交通状況と定義した。各交差点間の距離が等しいため、車の台数で各道の流れやすさを表せる。東西方角の道と、南北方向の道における車の流れやすさの差を道路網全体で計算し、それを最小化するようなイジングモデルを作成した。