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デンソーは、工場の無人搬送車(AGV)の走行経路最適化を、量子アニーリング(QA)などを研究する東北大学 教授の大関真之氏の研究室と共同で検討した。結果、AGVの稼働率を80%から95%に高められる見通しがついたという。

 デンソーは自動車部品の素材開発から物流まで、幅広く量子アニーリングを活用したい考えだ。「自動車が絡む分野での利用を広く検討している。カーボンニュートラルの実現に貢献したい」(量子アニーリングの提唱者の1人である、同社 先端技術研究所 AI研究部 データサイエンス研究室 量子コンピューティング研究課 課長の門脇正史氏)。

AGV稼働率が15ポイントアップ

 そんな取り組みの1つとして、無人搬送車(AGV)の移動最適化を東北大学 教授の大関真之氏と共同研究した(図1)。AGVは工場内部品配送の重要な手段であり、通常、あらかじめ設定したルートを規定のルールで走行している。ただ、そうした単純走行では渋滞が生じて稼働率が低下しやすい。そこですべてのAGVを一括制御する。数秒置きに各AGVの経路候補をつくり、最適な経路を選択する組合せ最適化問題にしたのだ。

(a)デンソーの工場内を移動するAGV
(a)デンソーの工場内を移動するAGV
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(b)設定した目的関数<sup>1)</sup>
(b)設定した目的関数1)
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(c)D-WaveのQAマシンによる、ある時刻でのAGV配送の最適化結果
(c)D-WaveのQAマシンによる、ある時刻でのAGV配送の最適化結果
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図1 D-WaveのQAでAGVの稼働率が80%から95%に
デンソーと東北大学 教授の大関真之氏による、工場内無人搬送車(AGV)の部品配送経路最適化の試行例を示した(a)。現在は事前に設定したルートを指定のルールで走行しているが、こうした単純な制御では渋滞を招きやすい。渋滞解消に向けて、走行ルートや移動停止をQAマシンで設定時間ごとに最適化するためのイジングモデルを作成した(b)。実際に3秒間ごとに最適化したところ、全体としてAGVの渋滞が改善でき、稼働率が従来の80%から95%に向上する可能性があることを確認した(c)。(図:(a)はデンソーの許諾を得て同社の動画を日経クロステックがキャプチャー。(c)は動画を基に日経クロステックが作成)