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 ついにトヨタ自動車が、電気自動車(EV)の本格的な展開をにらむ次の一手を打ち出した。新型EVの「bZ4X」を2022年5月12日から販売する。21年12月に同社が発表した「2030年にバッテリーEVのグローバル販売台数で年間350万台を目指す」といった戦略における大きな一歩だ。このEVをきっかけに、日本のEV市場は大きく変わるのだろうか。

トヨタ自動車が2022年5月12日に発売する新型の電気自動車(EV)「bZ4X」。個人向けはトヨタ車のサブスクリプションサービス「KINTO(キント)」で提供する方針だ(出所:トヨタ自動車)
トヨタ自動車が2022年5月12日に発売する新型の電気自動車(EV)「bZ4X」。個人向けはトヨタ車のサブスクリプションサービス「KINTO(キント)」で提供する方針だ(出所:トヨタ自動車)
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 今、世間の流れはEVに傾いている。いわゆる「EVシフト」と呼ばれるものだ。欧州自動車工業会(ACEA)によると、EVシフトの震源地の一つとも言える欧州では、2021年の乗用車の燃料タイプ別の新車登録台数でバッテリーEVが、87万8432台(前年比63.1%増)の躍進を遂げ、全体としては9.1%のシェアを占めるまでに伸びている。

 ちなみに、欧州の乗用車市場規模は年間約970万台で、約230万台(軽自動車を含めれば、約385万台)規模の日本の登録車市場の約4.2倍(軽自動車を含んだ場合は約2.5倍)になる。つまり、日本で9.1%のシェアとなれば、登録車だけであれば約21万台規模、軽自動車を含めれば35万台規模と同等だ。

 では、日本のEVシェアは実際のところどうなのであろうか。日本のEV市場を改めて振り返っておこう。

環境は既に整っている

 日本は、既に10年以上も前となる10年に日産自動車の「リーフ」、三菱自動車の「i-MiEV」という2車種の本格的な量産EVが発売された。この2車種の登場により、日本でのEV用急速充電インフラは急速に拡大。16年4月の段階で約6400カ所を超え、今では7700カ所ほどがそろうようになった。

 国内の高速道路のサービスエリア(SA)の多くにEV用の急速充電器が備わっており、日産や三菱自動車のディーラーの急速充電器をはじめ、大型商業施設の多くにEV用の充電器が用意された。日本におけるEV用の充電インフラは、最低限度の環境ではあるものの既に整ったと見ていいだろう。

 先行した日産と三菱自動車から遅れること数年、ようやく他のメーカーからもEVが続々と投入されるようになった。20年にはホンダ「ホンダe」、トヨタ「C+pod(シーポッド)」、トヨタのレクサス「UX300e」、そして21年にはマツダ「MX-30 EV MODEL」が発売された。つまり、21年の時点で既に、日産、ホンダ、トヨタ、マツダのEVを買うことができたのだ。

ホンダ初の量産電気自動車(EV)「ホンダe」。都市型コミューターとしての位置付けで開発された。価格は451万円(税込み)から(出所:ホンダ)
ホンダ初の量産電気自動車(EV)「ホンダe」。都市型コミューターとしての位置付けで開発された。価格は451万円(税込み)から(出所:ホンダ)
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マツダの電気自動車(EV)「MX-30 EV MODEL」は、小型SUV(多目的スポーツ車)タイプだ。航続距離の延長よりも、日常利用(デイリーユース)を重視して開発したという(出所:マツダ)
マツダの電気自動車(EV)「MX-30 EV MODEL」は、小型SUV(多目的スポーツ車)タイプだ。航続距離の延長よりも、日常利用(デイリーユース)を重視して開発したという(出所:マツダ)
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 また、米Tesla(テスラ)をはじめドイツMercedes-Benz Group(メルセデス・ベンツグループ)に同BMW、同Audi(アウディ)、同Porsche(ポルシェ)、英Jaguar Land Rover(ジャガー・ランドローバー、JLR)、欧州Stellantis(ステランティス)のPeugeot(プジョー)といった欧米製のEVも大挙して日本に上陸している。

 このように、EVの選択肢は複数あり、インフラは最低限ではあるが整っていた日本。肝心なEVの販売実績はどうだったのであろうか。