日本市場も急伸の気配
そもそも、19年度の時点では、日本の市場は、主に日産、三菱自動車、そしてテスラの3つのブランドがEV販売の大多数を占めていた。逆に言えば、それしかなかったのだ。しかし、20年から21年にかけて、ホンダ、トヨタ(レクサス)、マツダがEVを投入し、市場が拡大したことが分かる。
その結果、21年のEV販売は前年比を大きく上回った。月ごとの販売では、21年5月で前年比327.5%に上ったことを筆頭に、以降、毎月の前年比は130~160%以上をコンスタントに記録しているのだ。1年間を通して見ても、前年比は約168%と好成績だ。
また、EVの年間販売台数の約2万4000台のうち、約半数が日産。さらに輸入車でいえば、まだ6割ほどがテスラだ。日本の市場ではまだ、EVの選択肢となり得るライバルが育っていない。
ここで鍵を握るのが、国内販売の雄であるトヨタだ。こんな状況を許すことはないだろう。22年5月から、SUBARU(スバル)と共同開発したEVのbZ4X(スバル版は「ソルテラ」)の販売が始まる。トヨタの販売力をもってすれば、日産のEV販売に負けず劣らずの数字を出すことは疑いない。仮に日産と同等の年間1万2000台程度をトヨタが売れば、それだけで国内のEV販売台数が1.5倍になる。
他方、輸入EVの販売台数が、20年度の3778台から21年度は1万12台にまで急増している点も見逃せない。テスラ以外のブランドが、21年から積極的に日本市場へEVを投入している。この伸び率のままでいけば、22年度は輸入車だけで2万台超えも期待できるのだ。
EVで先行する日産の新型EV「アリア」が、4月中旬の時点で既に6800台の予約を得ているというだけに、トヨタの1万2000台と輸入車のプラス1万台が現実のものとなれば、22年度のEVの総数は前年度の2倍に至ることも夢ではない。
とらぬタヌキの皮算用ではあるが、21年のEV販売が伸びていることは確かなのだ。問題は、今後どこまで数字を伸ばすことができるのか。
少し先を見据えた際のポイントとなるのは、販売力の強いトヨタのbZ4X、そして日産と三菱自動車が発売を予定している軽自動車規格のEVではないだろうか。軽自動車マーケットは年間150万台を超えるほど巨大である一方、EVのシェアはほとんどゼロに近い。1%でもシェアを獲得できれば、それだけで1万5000台となる。
また、日産と三菱自動車の軽自動車EVが成功すれば、ホンダやダイハツ、そしてスズキが見過ごすわけはない。特にホンダは24年前半に商用の軽自動車EVを投入することを発表している。多数のメーカーが参入することで、注目が集まれば、軽自動車EVの販売も伸びることだろう。
そのためにも、先陣となるトヨタのbZ4Xの役目は重大だ。そして、日産と三菱自動車の軽自動車EVが、起爆剤としての役目を果たせるかが鍵となる。まずは、スタートダッシュがうまくゆくのか。トヨタ、日産、そして三菱自動車の奮闘に期待したい。