日産自動車と三菱自動車は2022年5月20日、軽自動車タイプの電気自動車(EV)を発表した。日本でも急速に進むEVシフトにおいて、大きな転換点となりそうだ。かつて量産型の軽EVで苦戦した三菱自にとっては、再びの挑戦となる。果たして、軽EVは市場に受け入れられるのだろうか。
EVは昔から「シティーコミューター(都市内の短距離移動向け車両)として普及する」と考えられてきた。駆動用の2次電池の限られた性能やコスト高を考えると、電池を大量に搭載するのはデメリットが多い。それよりも航続距離を割り切り、電池を小さくすることで、コストを安くする。つまり、「遠出しない街乗りでの利用がいいのでは」ということだ。
そのことを意識したのか、国産車初の本格量産EVとして09年に三菱自が販売した「i-MiEV」は軽自動車規格だった。当時のリリースによると、一充電での航続距離はおよそ160km。「日常ユースに十分対応できる走行距離」と割り切っており、街乗りをイメージさせるクルマだった。
ちなみに、日産が誇るEVの「リーフ」は10年の登場だ。発表当時の資料によると、航続距離はi-MiEVとほぼ同じで160km程度だったものの、こちらは軽自動車よりも大きい登録車だった。つまり、日本のEV市場では、登録車よりも先に軽EVが導入されており、シティーコミューターとして市場を切り開くことが期待されていたのだ。
ところが現実は、なかなか理想通りにはいかず、軽EVは苦戦した。i-MiEVはリーフほど売れなかったのだ。結局、モデル末期に当たる18年に全長を拡大し、軽自動車から登録車に仕様を変更した。シティーコミューターとしての軽EVは需要が低く、登録車サイズの乗用車であるEVの方が人気であったと言わざるを得ない状況だった。
軽EVの販売台数を見てもその差は歴然だ。EVの補助金事業を行う、次世代自動車振興センターが発表した「EV等 販売台数統計 販売台数(国内)一覧」によると、20年のEV販売台数は乗用車が1万4363台に対して、軽自動車EVは1480台。わずか10分の1というレベルだ。
新型の軽EVは成功するのか
しかし、日産と三菱自は、シティーコミューターとしての軽EVを諦めたわけではない。22年5月20日に発表した、新型EVの日産「サクラ」と、その兄弟車である三菱自「eKクロスEV」がその証しとも言えるだろう。
この軽EVは、既に販売されている軽自動車、日産「デイズ」と三菱自「eKクロス」をベースにEV化したものだ。20kWhの電池を搭載し、航続距離は最大で180km(WLTCモード)を実現するという。価格はサクラが233万3100円(税込み、以下同)から、eKクロスEVが239万8000円からだ。
果たして日産と三菱自の挑戦は成功するのか――。それを占う上で、参考になる調査がある。日本自動車工業会が22年4月20日に発表した「2021年度 軽自動車の使用実態調査」だ。全国の軽自動車ユーザーに対して、軽自動車の使用と購買実体のほか、次世代環境技術に対する関心度などを調査したもので、100ページ超の報告書である。
軽自動車ユーザーがどのような理由でクルマを選び、そして、どのように使っているのかをこの調査結果から読み解けば、日産と三菱自が満を持して投入した新型の軽EVの可能性が見えてくるだろう。今回は、この調査から軽EVの今後の販売に関連しそうな部分をピックアップして、新型の軽EVの未来を占ってみよう。
まず、ベースとなる部分から見ていこう。そもそも、軽自動車を購入した人たちは、どのような属性なのだろうか。軽EVの潜在顧客として、参考になるはずだ。