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 自動車の電動化の流れは決定的だ。そして電動化の先にあるのが電気自動車(EV)となるが、その普及に至る道のりは自動車メーカーごとに考えが異なる。現状はいったいどうなっているのか。新たな動きが見えてきたことから、改めて日系自動車メーカーのEVロードマップをまとめた。

EVは全方位戦略の1つ

 トヨタ自動車の基本方針は「全方位戦略」だ。2023年4月1日付で新社長に就任予定の佐藤恒治氏(現・同社執行役員)は、23年2月13日の記者会見において「マルチパスウエイ」との表現で、これまでの「全方位戦略」を踏襲することを述べた。

 最終的なゴールは「カーボンニュートラル社会の実現」であり、その実現のためにはEVに限定せず、さまざまな方策を試みるというものだ。ただし、EVを否定しているわけではない。佐藤氏は「マルチパスウエイにおいてバッテリーEV、BEVも重要な選択肢」だと明言する。

2023年4月1日付で新社長に就任予定の佐藤恒治氏(現・同社執行役員)は「マルチパスウエイ」と表現しながら、これまでの「全方位戦略」を踏襲することを述べた(写真:トヨタ自動車)
2023年4月1日付で新社長に就任予定の佐藤恒治氏(現・同社執行役員)は「マルチパスウエイ」と表現しながら、これまでの「全方位戦略」を踏襲することを述べた(写真:トヨタ自動車)
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 トヨタが掲げているEVに関する具体的な目標は主に3つだ。「30年までに30車種のEVを展開」「グローバルに乗用・商用の各セグメントにフルラインでそろえる」「30年に年間350万台のEVを販売」というものである。その先兵となるのは同社の高級車ブランドに当たるレクサス。佐藤氏は「26年を目標に、次世代のBEVをレクサスブランドで開発する」としている。「次世代のBEV」とは、電池やプラットフォーム、クルマのつくり方など、全てをBEV最適で考えたものという。

力関係の変化はあっても協業路線は維持

 日産自動車は23年2月6日、フランスRenault(ルノー)グループとの株式相互保有のバランスを変更した。互いに15%を持ち合う対等の関係になったことで注目された。

日産自動車とフランスRenault(ルノー)グループは2023年2月6日、株式相互保有のバランスを変更し、互いに15%を持ち合うことを発表した(写真:日産自動車)
日産自動車とフランスRenault(ルノー)グループは2023年2月6日、株式相互保有のバランスを変更し、互いに15%を持ち合うことを発表した(写真:日産自動車)
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 その日産のEV戦略は着々と進んでいる。ルノーとの新たな関係を発表してから僅か1週間後の2月13日には、インドにおける日産とルノーのEVを含む新型車の共同開発を発表。2社はAセグメントのEVを開発して、日産とルノーそれぞれから発売するとした。

 また、同様にラテンアメリカにおいても共同開発のAセグメントEVを投入する計画があるという。

 日産のEV戦略は、22年1月に発表した「Alliance 2030」が基本となっている。これは、日産とルノー、三菱自動車の3社によるアライアンスの30年に向けた目標だ。

 その筆頭として掲げられたのが「EVとコネクテッド・モビリティーに注力」というものだ。その道のりとして、「26年までにプラットフォームの共用化率を80%に」「5つのEV専用プラットフォームから35車種のEVを投入」「220GWhのバッテリー生産能力の確保」などが示された。

 欧州市場向けとしては「マイクラ」後継の新型EVの投入が発表されている。26年から生産する予定だ。

日産自動車は、欧州市場へマイクラの後継車となる新型コンパクト電気自動車(EV)を投入することを、2022年1月に発表している(写真:日産自動車)
日産自動車は、欧州市場へマイクラの後継車となる新型コンパクト電気自動車(EV)を投入することを、2022年1月に発表している(写真:日産自動車)
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 だが、欧州における戦略は既に次の段階に進みつつあるようだ。日産とルノーは26年以降の次世代CセグメントEVにおける協業について、まさに今、話し合っているという。株式の持ち合いにより力関係は変化したものの、協力関係そのものは維持されるようだ。