業績低迷でコスト対応力も必須に
最後の力は、顧客が納得できる価格戦略を遂行する「コスト対応力」だ。ユーザー企業のIT投資対象が2020年以降、一気に拡大したことが理由の1つに挙げられる。2019年以前の投資対象は「ITコンサルティング/上流設計」「ERP」などの既存IT分野、「RPA」をはじめとするDX関連分野が主だった。2020年以降、「ビデオ・音声会議」など新常態を支える分野も投資先に加える必要が出てきた。
コスト対応力が求められるもう1つの理由が業績の低迷だ。調査では回答企業に連結売上高が前年と比べてどう変わったかを聞いている。その結果「減少した」と回答した企業の割合は前回の調査に比べて12.7ポイント増の35.7%に上がった。
こうした背景もあり、今回の調査では多くのユーザーから利用しやすい料金体系を求める声が多く寄せられた。「グループウエア/ビジネスチャット」について「機能は特に問題ない。しかしコストは人数分かかる。人数が増えたらディスカウントするなどコスト的なバリューを上げてほしい」(情報処理/ソフトウエア/SI・コンサルティング業)といった声が代表的だ。ITベンダーはコスト対応力を高めて、ユーザー数が増えても使い続けやすい料金体系への見直しが求められている。
「自社都合で変更、使いたくない」
料金体系の変更や料金の値上げを問題視する声は「データベースソフト」「ERP」を中心に強い。「データベースソフト」について「(利用製品のベンダーは)ライセンス体系およびコストを自社の都合で変更するため、できるだけ使いたくない」(金融/証券/保険業)といった不満の声が強かった。「ERP」について製造業のユーザーは「ライセンスの解釈をある日突然変更し、いやなら使うなという態度」だといい、「ERPを他に変えるのは現状難しく、仕方なく使っている」と続ける。
コストに関しては費用対効果を疑う声も目立った。「グループウエア/ビジネスチャット」について「特にクラウドサービスで、(顧客を)囲い込んでから値上げするケースが多い。機能拡張による値上げをうたっているが、当初の価値と比べると拡張と値上げのバランスがおかしい。機能をそのままに価格を据え置きたいユーザーは多いと思う」(製造業)などの声が集まる。
コストへの不信感から、他の製品やサービスへの切り替えを表明する声も集まっている。「データベースソフト」について「高過ぎ。値上げし過ぎ。最初に頼んだシステム会社の慣れもあるのでやむなく使っているが、遠くないうちに他のソフトに変更する」(流通/小売業)といったベンダーの変更を宣言する声も頻出した。
「料金体系の変更や料金の値上げ」「費用対効果」「コストへの不信感が背景にある製品やサービスの切り替え」といった声を踏まえると、ITベンダーは料金に見合った価値を納得感のある形で提供することが求められる。加えてコスト面の課題を克服した新製品や新サービスの創出も望まれている。