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 GIGAスクール構想の推進により、児童・生徒1人に1台の端末と高速ネットワークの整備が急速に進んでいる。こうしたハードウエアの環境が整うにつれ、児童・生徒の学びを支援するソフトウエア(アプリケーション)が注目を集めている。端末の配備が完了したICT教育先行校は汎用的なソフトウエアに加えて、専用のソフトウエアを導入し、児童・生徒の個別最適化学習や共創力を育む授業を始めている。

 小中学校に導入が進む専用ソフトは教育現場にどのような効果をもたらすのか。AI(人工知能)を活用した教材や共創力を生み出すソフトウエアについて見ていこう。

AIで個別最適化学習を支援

 「生徒の習熟度に合わせて出題できる。より授業をコントロールしやすくなった」。こう話すのは東京都世田谷区立深沢中学校で数学を教える深沢享史教諭だ。世田谷区では2020年秋から児童・生徒1人に1台のiPadが配布され、2021年4月からCOMPASS(コンパス、東京・千代田)が開発するAI型教材「Qubena(キュビナ)」を区内の全小中学校90校へ導入。児童・生徒の約3万7000人が利用している。深沢教諭は授業内容の復習や、1次関数、2次方程式などの単元別テストの復習にQubenaを活用している。

 Qubenaは問題を出題するWebアプリケーションである。児童・生徒はタッチペンなどを用いて解答し、解答結果を採点する機能も備えている。対応する教科は、国語や算数・数学、理科、社会、英語の5教科だ。

 COMPASSの佐藤潤取締役副社長はQubenaの特徴を「児童・生徒1人ひとりに合わせて最適な問題を出題できること」と説明する。算数の分数の足し算や割り算を例に挙げると、計算の順序が分からず間違ってしまう児童がいたり、分数の割り算の方法が分からず間違ってしまう児童がいたりする。計算問題1問でも間違いの原因は多岐にわたる。

間違った箇所をAIが判別し、最適な復習問題を出題する
間違った箇所をAIが判別し、最適な復習問題を出題する
(出所:COMPASS)
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 こうした間違いの原因をAIで解析し、児童・生徒ごとに復習できるような問題を出題するのがQubenaだ。算数では「1問当たり30通りほどの戻り先が用意されている」(佐藤副社長)

 Qubenaは教師が児童・生徒1人ひとりの解答時間や正答率をリアルタイムで収集できる「Qubenaマネージャー」という機能も搭載する。深沢中学校で社会を教える佐藤哲教諭は「教師の勘で判断していた習熟状況がすぐに分かるようになった」と効果を説明する。これまで生徒の習熟度や理解度は、テストを実施し、採点をして初めて教師が把握できた。テストを実施しない間は教師が生徒の反応を見て判断しなければならなかった。

 佐藤教諭は中間・期末テストによって「数カ月後に生徒の理解度を把握しても遅い」と話す。知識が定着する前に忘れてしまう可能性があるからだ。佐藤教諭は基礎知識の定着にQubenaを活用している。具体的には、授業開始直後の時間を使い、前回の授業内容をQubenaで出題して理解度を把握する。「問題の正答率や解答時間を見れば、復習が必要かどうかを判断できる」(佐藤教諭)。もし正答率などが低ければ、重点的に復習する。