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 急激な社会の変化に対応できる人材を育成する「STEAM教育」が注目されて久しい。STEAMは科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、アート(Art)、数学(Mathematics)の頭文字を取った造語。AI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)機器、スマートフォンといった新技術を活用するだけでなく、これらを作ったり、利用したりして、新しい製品やサービスを生み出す力を育てる狙いがある。

 実際の教育現場ではどのようなSTEAM教育を施しているのか――。STEAM教育の一環としてプログラミングの授業を展開している埼玉県久喜市の例を見ていこう。

地域の課題を解決する

 久喜市の教育委員会は2021年度、アマゾンジャパンと共同で倉庫システムをプログラミングで体験したり、理想科学工業と共同でSDGs(持続可能な開発目標)を学ぶエコバッグをプログラミングでデザインしたりといったカリキュラムを構築。企業と協力して新しいSTEAM教育のカリキュラム作りを進めている。

 そんな同市がSTEAM教育を始めたのは2013年と実に8年前に遡る。当時は文部科学省が指定する研究開発学校として1校の小学校でのみ展開していたが、2016年には市内23(当時)の小学校に拡大。当初から一貫しているのがプログラミング教育をSTEAM教育の一環として実施していることだ。

 久喜市では小学校低学年からプログラミング的思考を含む情報活用能力の育成を目指している。小学1年生から中学3年生までの間、児童・生徒はビジュアルプログラミングからテキストプログラミングまでを段階的に学んでいく。

 久喜市教育委員会の川島尚之GIGAスクール推進室室長はプログラミング教育について「単独で学ぶのではなく、社会課題を解決する1つの手段としてプログラミングを体験してもらう」と説明する。

 プログラミングだけを学んでも児童は実際の課題解決に結び付けて考えづらい。例えば企業や組織がプログラミングを活用する場合、業務を改善したい、効率化したい、といった明確な目的がある。こうした必要性にかられて学ぶプログラミングは「生きた知識として定着していく」(川島室長)という。

 そこで久喜市では児童が住んでいる地域の課題を、教科横断で解決する授業を実施している。プログラミングもその中に含まれる。小学校ごとに課題は異なるが、久喜市のある小学校では、地域で開催される祭りの後に散乱するゴミを減らすといった課題に取り組んだ。児童からは、夜でも目立つようにゴミ箱を光らせればよい、ゴミを入れると音が鳴るようにすれば楽しくなってゴミ箱に捨ててくれるのではないか、といった意見が出た。

 こうした課題を解決するにはセンサープログラミングなどの活用が欠かせない。実際には社会や図工、理科、総合学習の授業時間を使い、課題の認識からゴミ箱のデザイン・加工、電気を使ってゴミ箱を目立たせる仕組みなどを実装したという。

児童が授業で作製したゴミ箱
児童が授業で作製したゴミ箱
(出所:久喜市)
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