日産自動車が開発する「e-POWER」(図1)。業績回復の鍵を握る、同社にとって重要なパワートレーンの電動化技術だ。
e-POWERは、発電専用エンジンと発電機、インバーター、駆動モーター、リチウムイオン2次電池(以下、電池)で構成されたハードウエアと、制御用ソフトウエアから成るシステム。これを搭載した車両(以下、e-POWER搭載車)は、ガソリンで動くエンジンの回転で発電機を回し、発電によって得た電気を電池に充電。続いて、この電池に蓄えられた電気を駆動モーターに供給し、タイヤを回転させることで車両の駆動力を得る仕組みだ。
エンジンとモーターを搭載するのは、通常のハイブリッド車(HEV)と同じ。だが、エンジンが「発電専用」である点が異なる。エンジンを発電専用にし、変速機を設けないといった工夫により、静粛性が高く、滑らかな電気自動車(EV)並みの走行感覚を実現したのが特長だ。
現在のe-POWERは第2世代に当たる。日産自動車はこの第2世代のe-POWERを、2020年11月にコンパクト車の3代目新型「ノート」(図2)に、21年6月にはその上級モデルである「ノート オーラ」(図3)に搭載した。発電専用エンジンには直列3気筒で排気量1.2Lのエンジンを採用。駆動モーターは、ノートには最高出力85kWで最大トルク280N・mの交流同期モーターを、ノート オーラには最高出力100kWで最大トルク300N・mの同モーターを使用している。