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他社のHEVにある変速ショックがない

 e-POWER搭載車のEV並みの走行感覚とは、第1に1段階上の静粛性。ノートのe-POWER搭載車の場合はコンパクト車だが、大きめのコンパクト車(エンジン車)並みの静かさを実現した。第2に、e-POWER搭載車には変速機がないため、他社のHEVとは違って走行時に変速ショックがない。そして第3に、駆動モーターの応答性はエンジンの10倍だから、アクセル操作に遅れずにリニアに反応する。

 これらの特徴は「少し運転すれば誰でもすぐに分かる」(同社)。実際、e-POWER搭載車は好評で、21年3月の時点でe-POWER搭載車の国内累計販売台数は50万台を突破した*3

*3 ガソリンエンジン車とe-POWER搭載車の両ラインアップを持つ2代目ノートでは、購入者の6割がe-POWER搭載車を選んだ。また、日産自動車は2代目ノートに加えて2018年にミニバン「セレナ」に、20年6月にはSUV(多目的スポーツ車)にもe-POWER搭載車をラインアップした。

 燃費は、第2世代のe-POWERを搭載した新型ノートの最高燃費が29.5km/Lと、ホンダのHEV「フィット」の最高燃費(29.4km/L)と同等。ただし、トヨタ自動車のHEV「ヤリス」の最高燃費(36.0km/L、いずれもWLTCモード)にはかなわない。それでも、日産自動車はEV並みの走行感覚に価値を見いだす顧客にe-POWER搭載車を訴求していく考えだ。

EVとe-POWERの市場データが財産

 日産自動車には電動車を開発する上で他社にない優位性がある。共に50万台を販売してきたEVとe-POWER搭載車に関する市場データだ。このビッグデータを同社は「エネルギーマネジメントシステム」に生かしている。

 同システムは、発電専用エンジンと電池の電気の配分を決める装置だ。発電専用エンジンで発電した電気を電池の充電に使うのか、それとも駆動モーターの回転に使用するのか、発電専用エンジンを止めて電池の電気だけで走るのかなどを決めて制御する。日産自動車はここにビッグデータを活用する。

 これにより、例えば、運転者のアクセルペダルの踏み方から加速状態を予測できるようになった。アクセルペダルが急に踏み込まれたときに、しばらく維持されるか、すぐに戻るかを予測し、後者であれば発電専用エンジンを回さない。発電専用エンジンの作動頻度を極力減らし、低燃費や静粛性を維持するためだ。

 第2世代のe-POWER搭載車では、タイヤの回転変動から路面の凹凸状態を予測。ロードノイズが大きいときに発電専用エンジンを動かし、小さいときには止める制御を実用化した。結果、新型ノートe-POWER搭載車は先代に比べて、発電専用エンジンをかける回数を30km/h程度の低速域で7割、50km/h程度では5割減らしている。

 e-POWER搭載車には高速域の燃費が落ちるという課題がある。発電専用エンジンの回転力をいったん電気に変換してからタイヤを回すためだ。だが、ビッグデータを解析したところ、実は「高速走行でも意外にアクセル操作はあり、回生エネルギーが得られている。多少効率は落ちるが、気にするほどではないと分かった」(同社)という。

 このビッグデータを生かし、日産自動車は第2世代のe-POWERの4輪駆動型のシステム「e-POWER 4WD」も開発。リア側に最高出力50kWで最大トルク100N・mのACモーターを追加(図5)。車輪の荷重に応じてフロントとリアに駆動力を最適配分する。

図5 「e-POWER 4WD」の外観
図5 「e-POWER 4WD」の外観
第2世代のe-POWERの4輪駆動型システム。リア側に最高出力が50kWの駆動モーターを追加し、従来の14倍の駆動力を発揮する。駆動モーターの高応答性や販売した電動車両の市場データを使って開発を進めた。(出所:日経ものづくり)
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