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 「数え切れないくらい多い」(同氏)という先述のコンセプトを構成する生産技術の中で、最も重要なのが「パワートレイン一括搭載システム」だ(図2。ガソリン車やEV、HEVなど異なるパワートレーンの車両を1つのラインで生産できるようにしたもので、今後はこれを「世界中の全工場に展開していく」(同氏)計画だ。

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図2 日産の「パワートレイン一括搭載システム」
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図2 日産の「パワートレイン一括搭載システム」
パワートレーンの組み立てに必要な部品をパレットにセットし、ロボットが持ち上げて自動で組み付ける(a)。パレットは2層構造になっており、全社共通のベースに、フロント/センター/リアに分かれたパレットを組み合わせる(b)。(出所:日産自動車)
* インテリジェントファクトリーの新技術としてはパワートレイン一括搭載システムの他、車体パネルの接合箇所の水漏れを防止するシーリングを塗布して仕上げる作業の自動化、金属製ボティーと樹脂製バンパーの同時塗装を可能する革新塗装ラインなどがある。

27通りを1つの生産ラインで

 専用か混流か─。日産自動車が次世代の生産技術の開発に6年間もの時間を費やした背景には、パワートレーン戦略が定まっていなかった態勢の遅れがある。争点になったのがEVの扱いだ。

 大量生産するのであれば、「EVの専用ラインを構築した方がコストを抑えられる」(日産自動車の生産技術者)。実際、EVを強力に推進するドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen、VW)は、数千億円を投じてドイツや中国、米国にEV専用工場を用意すると決めた。

 他社に先駆けてEV「リーフ」を量産し、EVの普及を目指してきた日産自動車だったが、専用工場を用意するほどEV市場が成長するまでには時間がかかると判断した。パワートレーンの電動化は「エンジン車から一足飛びにEVに行くのではなく、HEVを経て徐々に変化していく」(前出の生産技術者)。これが、リーフを10年近く販売してきた同社が出した答えだ。

 日産自動車がEVに代わって、当面の電動車両の主役として位置付けるのがe-POWER搭載車である。現在は数種類のエンジンとモーターの組み合わせで展開しており、e-POWER専用の発電エンジンの実用化も計画中だ。e-POWERの仕様を増やすのと並行して、EVに関しても同社はアリアからEV専用の新プラットフォーム(PF)を導入する。

 EV専用工場ではなく、多様化する電動車両を混流生産する道を選んだ同社。その戦術の中核を担うのがパワートレイン一括搭載システムだ。

 副社長の坂本氏によれば、「モーターやエンジン、電池、サスペンションなど、27通りの組み合わせ(のパワートレーン)に1つの生産ラインで対応できる」という。しかも、生産ラインを大幅に変更せずに、需要に応じて生産するパワートレーンの内訳を柔軟に変えられる。