クラウドが広く普及した現在、データーセンター(DC)は単なる施設ではなくなっている。ネットワークサービスと一体で提供される社会基盤へと変貌しつつある。このためDCに関する知識はIT技術者にとって必修だ。
そこで本特集では、DCで提供されているサービスや立地、新設の動き、安定稼働や環境への取り組みなどの「今さら聞けない謎」に答える。
まずはDCとは何かを解説しよう。DCとは、情報システムのサーバーやネットワーク機器などを設置・運用することに特化した施設の総称を指す。DCには、耐震・免震構造や非常用発電機、入退場管理システムなど様々な仕組みや設備が必要になる。
自前でDCを建設および管理するのは、多くの企業にとってハードルが高い。そこで、複数の企業にDCを貸し出すビジネスが登場した。DCを貸し出す事業者をDC事業者、貸し出すDCを「商用DC」などと呼ぶ。
「場所貸し」と「サーバー貸し」
商用DCで提供されるサービスは大きく2つある。1つは、情報システムの置き場所を提供する「コロケーション」または「ハウジング」と呼ばれるサービスだ。
コロケーションやハウジングでは、DC事業者が電源や通信環境を用意し、ユーザー企業がサーバーなどの機器を持ち込んでシステムを構築する。ここでいうユーザー企業には、米Amazon Web Services(AWS)や米Microsoftといった大手クラウド事業者も含まれる。
商用DCで提供されるもう1つのサービスは、サーバーやディスクスペース、通信環境などを提供する「ホスティング」だ。日本では2000年代初頭からインターネット接続サービスとともに利用が広がったが、最近ではIaaSなどクラウドサービスへの移行が進みつつある。
DCのシステムを相互接続
近年では、DC内やDC間に張り巡らした高速の通信インフラを活用したネットワークサービスも存在感を増している。その1つが、DCを利用する企業のシステムを相互接続する「インターコネクション」と呼ばれるサービスだ。
インターネットを介さない閉域網でシステム間を接続する。同一企業のシステムを接続する場合もあれば、取引先企業とのシステムを接続する場合もある。