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 2020年初めから急拡大した新型コロナウイルス感染症によって、一時は稼働を見合わせる国内工場も多かったが、現在は対策も進んできた。自動車などの一部産業を除いて、人を減らす・移動を減らすといった対応を取りつつ通常稼働に戻っている。

 ただし、コロナ禍で人材確保や人の移動が難しくなり、工場のさまざまな問題があらためて浮き彫りとなってきている。例えば、従来以上に少ない人数でいかに生産性を維持・向上させられるかを強く認識せざるをえなくなった。遠隔地に対して工場の情報を伝達・共有できるような仕組みも重要性が増している。

コロナ禍を機に多様な課題に対応

 一方で、ITや機械・ロボット技術の進歩・普及も相まって、コロナ禍という試練を機に、工場が抱える課題に対するさまざまな手立ても見えてきた。例えば、その1つが搬送作業の自動化。搬送は製品の価値を生むわけではなく、人ができるだけ関わらないようにしたい作業の代表例だ。

 従来の自動搬送車(AGV)は床に貼った誘導用磁気テープに沿って巡回するだけの硬直的な運用がほとんどだった。しかし近年は、障害物などを回避しながら自律走行できる自動搬送ロボット(AMR)の活用が広がるなど、企業や工場のそれぞれの状況・課題に応じた柔軟な運用を実現しやすくなっており、適用可能な場面も増えた。

 現場でデータを手軽に収集・分析しようという現場重視の「見える化」の動きに力を入れる工場も多い。在宅勤務や移動制限によって、遠隔で現場を把握したり現場主導でデータを活用したりといった機会も増えた。コロナ禍が収まってもこの動きはますます広がるだろう(図1)。

図1 進化する工場
図1 進化する工場
新型コロナで人手不足などが加速し工場は改革を加速させている。中でも、省人化効果の大きな搬送の自動化や、現場作業者を情報武装するための見える化といった取り組みが広がっている。(出所:日経ものづくり)
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