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 行政デジタル改革の司令塔となるデジタル庁が2021年9月1日に発足した。職員数約600人、うち民間採用が約200人と中央官庁では相対的に小さな規模から始動した。デジタル庁は既存の庁とは位置付けや体制・役割が大きく異なる。6つの疑問から理解しよう。

疑問1:デジタル庁のトップはなぜ首相なのか

 デジタル庁は内閣に設置された、首相が長を務める行政機関である。首相がトップなのは、その強い権限の下で、省庁横断のデジタル行政改革を推し進めるためだ。デジタル庁は府省庁が調達する情報システムの予算を集約して、デジタル政策も含めて府省庁間での総合調整を担う。情報システム予算などで強力な権限を持つことから「他の府省庁よりも1段高い位置にある行政機関」と例えられることもある。

 内閣に設置して首相が長を務める「庁」は他に復興庁しかない。デジタル庁と合わせて例外的な存在といえる。復興庁が府省庁を束ねて復興政策を推進する役割を担うのと同様に、デジタル庁にも首相が主導する政策を遂行する役割が期待されている。

疑問2:金融庁など他の庁と何が違うのか

 デジタル庁と復興庁を除くと、庁が付く行政機関は、経済産業省や文部科学省など国家行政組織法に定める省が設置する「外庁」がほとんどだ。経産省の外庁である中小企業庁や特許庁、文科省の外庁であるスポーツ庁などである。これらの庁は、各省が担当する行政分野のうち専門性が高い特定業務を「のれん分け」して、専門に特化した行政事務を担当している。

 金融庁と消費者庁は、首相が自ら担当する行政事務を所管する「内閣府」に置かれている。一方、デジタル庁は行政の最高機関で首相と国務大臣で構成する「内閣」に置かれている。金融庁と消費者庁は内閣の下にある内閣府の外庁であり、中小企業庁などに近い、専門分野に特化した行政機関である。府省庁横断の政策推進など強い権限を明示的には持っていない点もデジタル庁などと異なる。

疑問3:デジタル庁やデジタル相を置く根拠となる法令は何か

 デジタル庁やデジタル相の根拠となる法令は、2021年5月に国会で可決され、2021年9月1日に施行した「デジタル庁設置法」である。「内閣に、デジタル庁を置く」(第2条)ことや「デジタル庁の長は内閣総理大臣」(第6条)であることが規定されている。

デジタル相に就いた平井卓也前デジタル改革相(左)とデジタル監に就いた石倉洋子一橋大学名誉教授
デジタル相に就いた平井卓也前デジタル改革相(左)とデジタル監に就いた石倉洋子一橋大学名誉教授
(撮影:日経クロステック)
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 首相を補佐する形で、デジタル庁には主任の大臣である「デジタル相」が国務大臣から充てられる。デジタル庁設置法ではその役割を「内閣総理大臣を助け、デジタル庁の事務を統括し、職員の服務について統督する」(第8条第3項)と規定している。初代デジタル相には平井卓也前デジタル改革担当相が就任した。