多種類の重機を自律運転させて巨大土木施設を建設するという世界に例を見ない技術。鹿島が目指す建設現場革新への第一歩は、重機に自身や周囲の状況を確認するセンサー類とハンドル操作する操舵(そうだ)装置とを設置することだった。
もちろん、それだけで重機を自律運転させた施工ができるわけではない。重機を制御する手立てが必要だ。今回は、重機の移動制御を中心に、その仕組みをどのように構築していったのかを解説する。
自動化対象として最初に選んだ振動ローラーの基本動作は、真っすぐ走ること。複雑なのは、端部において隣のレーンに切り返す動きくらいで、作業に必要な動きは比較的単純だ。そう考えると、振動ローラーを自律運転させるためのルート設定は簡単で、自律運転の実現難度も低く思える。鹿島もこうした動作の単純さを踏まえて、振動ローラーを最初の開発対象に据えた。
しかし、自律運転の実現はそれほど簡単ではなかった。「実機に伝わる振動で操舵装置がずれてしまうなどいろいろ苦労があった」と、鹿島技術研究所の三浦悟プリンシパル・リサーチャーは振り返る。真っすぐ動かすことも決してたやすくなかった。