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複数の重機を自律運転させて建設現場を“工場”に変える。そんな目標を掲げた鹿島が、最初に自動化の対象として取り組んだ振動ローラーは、移動と作業を兼ねる。決められたルートを走らせることで、作業管理もできる。
一方、振動ローラーが稼働する前段で作業するブルドーザーは違う。ダンプトラックから荷下ろしされた締め固め材料をまき出すブルドーザーは、単に移動するだけでなく、同時に車体前方のブレード(排土板)を使って締め固め材料を押し広げ、整形しなければならない。
車体全体の動きに加えて、ブレードの高さを調整するといった複合的な動作が必要になるのだ。経路への追従以前に、作業を効率的にこなすための経路や動作を決めること自体が難しい。
そこで、ここでも熟練オペレーターの運転を通じて作業特性の把握を試みた。ただ、実機でデータをたくさん取得するのは現実的ではない。試験のたびに作業場を元に戻す手間がかかるなど時間を要するからだ。ブルドーザーでは、1日3回のデータ取りがやっとだった。
熟練オペレーターの協力を得て、数十回にわたってデータを取得してみると、運転方法はオペレーターによってかなり異なることが判明した。最終的な目的が同じでも、その道筋が大きく違うのだ。自動車の縦列駐車を例に挙げると分かりやすい。縦列駐車にはバックで入れるという大きな原則があっても、ハンドルの切り方は人によって千差万別。同じように、運転操作の違いが目立った。