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 鹿島が開発を進めるA4CSEL(クワッドアクセル)の真骨頂は、異なる種類の重機を連係させて自律運転している点と、重機の台数が多数に及ぶ点にある。

 秋田県内で工事が進む成瀬ダムの現場では、ダンプトラックが運んできた堤体材料のCSG(現地で得られる石や砂れきとセメント、水を混合した材料)を作業箇所に荷下ろしした後に、ブルドーザーがその材料をまき出す。そして、振動ローラーがまき出された材料を転圧して締め固めていく。これら一連の作業を重機が自律運転でこなすのだ。

 工事現場の重機を取り巻く環境は、産業用ロボットが並ぶ工場とは大きく異なる。同一の場所で単一の作業を繰り返すのではなく、違う場所で複雑な動作が要求される。

 そんな環境下で臨機応変に自律運転をこなすための頭脳である制御機構は、さぞ複雑で高度な技術を多用しているのではないか。そう思うかもしれない。しかし実際には、シンプルな決まりを積み重ねて、誰もが成し得なかった工事現場の工場化を実現している。

 ではここで、クワッドアクセルによる多重機の自律運転の手順を詳しく見ていこう。頭脳となるシステムは3つ。施工計画システムと施工管制システム、重機管理システムだ。

A4CSEL(クワッドアクセル)を支えるシステムの全体像。日経クロステックが鹿島の資料を一部加筆修正
A4CSEL(クワッドアクセル)を支えるシステムの全体像。日経クロステックが鹿島の資料を一部加筆修正
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 自律運転による施工を実施するために、まずは施工計画システムで当日の施工内容を固める。このシステムでは、作業日における施工範囲をCAD上で決め、どの機械を何台配分するのかといった条件を設定する。例えばブルドーザーを3台、ダンプトラックを5台、振動ローラーを5台といった格好だ。

施工計画を立てる際には、作業エリアや重機台数などの条件を入力する(資料:鹿島)
施工計画を立てる際には、作業エリアや重機台数などの条件を入力する(資料:鹿島)
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 重機の種類に応じた作業内容や重機間の作業順序は変わらない。重機ごとにあらかじめ設定された施工パターンを施工範囲に当てはめ、各重機の作業区画を配分していく。

 ここで、細分化された区画における重機の作業時間については、シミュレーションや実験などを基に把握できている。そして、こうした作業の組み合わせのうち、最適な組み合わせを計算していくのが、施工計画システムの役割だ。