続かなかったバブル期の開発
工事現場を工場に変えるという視点では、建設産業もバブル期辺りでロボット開発をはじめとする機械化を進めていました。
1990年前後のバブル期に、人手不足に直面した大手建設会社は、こぞって建設ロボットを作りました。建築分野も土木分野もロボット化と称し、関連した協会などもできました。でも、その頃に作ったロボットなんて、ほとんど残っていません。
最近になってコンクリートの床を仕上げるロボットが復活しています。過去に開発したものは機械が重く、コンクリートが軟らかい状態で施工させると、凸凹ができました。コンクリートがある程度硬くならないと使えない代物で、「床ならし」ならぬ、「床あらし」ロボットだったのです。硬くなった状態で左官作業なんてうまくできませんから。
フレームやモーターを軽くしたり、制御機構を改善したりして復活できましたが、以前開発したロボットは働いていません。つまり、“一品もの”の機械を作っていたのです。
こうした機械を入れても採算が合うような工事をずっと受注できる環境が続けば、ロボットなどの活用は継続していたかもしれません。でも、工事は現場単位で利益を上げなければならない。余裕のある工事の受注は簡単ではなく、その後、工事の発注量が減っていった点も相まって、コストの高い機械は必要なくなります。
そもそも、元請けの仕事を担う大手建設会社は、設備投資がほとんど要りません。建設機械の多くは下請けの会社が持っています。元請けは現場を管理する頭脳で勝負しようと考えていますから、機械への設備投資という発想があまりないのです。
機械の開発という点を見ると、クワッドアクセルでは自社開発の機械を主体にするのではなく、例えば振動ローラーでは汎用機械をベースにしていますね。
システムの構築でわれわれが目指したのは、上手な自動運転です。鹿島は、機械を作り出す会社ではありません。2012年に米国のグーグルがグーグルカーを作ったときに使ったのは、トヨタのプリウスでした。プリウスを改造して自動運転技術を磨く車にしたのです。
この改造はユーザー側がイニシアチブを握って進めた結果といえます。プリウスを使うグーグルの姿は、ユーザーの視点で必要と判断した技術を追求する重要性を物語っています。
1990年代に、大手建設会社などが様々なロボットを開発した際には、メーカーに頼んで製作してもらうのが基本でした。「こんな機械を作ってください」と依頼するのです。でも、それでは自分たちが思うように動かせなくなります。機械の製造とそれを動かすためのソフト開発が一体になっているからです。