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建設産業で大きな問題となっている人手不足や生産性の低迷を打開する狙いも込めて開発を進めている鹿島の「A4CSEL(クワッドアクセル)」。技術開発の先頭に立ち続けてきた同社技術研究所の三浦悟プリンシパル・リサーチャーに、この技術が建設産業にもたらす変革の可能性を聞いた。(聞き手:浅野 祐一)
開発の初期段階で参考となった取り組みや技術はあったのでしょうか。
建設業で重機の運転にIT(情報技術)を取り入れる大きな転機となったのは、1991年6月に大火砕流をもたらした長崎県島原市の雲仙普賢岳周辺における復興工事です。噴火活動などが続く中で安全に施工するために、ブルドーザーをはじめとする重機を遠隔操縦する技術が磨かれていきました。

1979年に鹿島入社。同社の技術研究所で無人化施工や情報化施工の技術開発に携わる。クワッドアクセルの生みの親だ(写真:日経クロステック)
重機のオペレーターは、カメラが映し出した現場の風景を操作室内のモニター越しに確認。コントローラーを動かして操縦していました。この技術は、その後も災害で被災した危険なエリアなどで利用が進んでいきます。
雲仙普賢岳の復興工事で導入が進んだ重機の遠隔操縦技術をさらに進化させ、建設現場の生産性や安全性を高める。そんなふうに抱いた思いが、クワッドアクセルの原点です。技術研究所の仲間4人と共に、クワッドアクセルのプロジェクトを立ち上げました。
クワッドアクセルで建設業の仕事の在り方は、どのように変わるのでしょうか。
今までの建設業は、「こんな構造物を造るぞ」という目標は掲げても、どうやって造るのかは職人たちに任せるというやり方でした。建設産業は重層構造の世界で、1つ下の下請け会社が進めている業務は分かっていても、2つ下の下請けが進めている業務は十分には分からない。そんな状況です。